平成29年度:第41回カリキュラム

第41回(平成29年度)東京電機大学ME講座 講師・日程・題目

9月26日(火)

大越 康晴(東京電機大学 理工学部 理工学科 電子・機械工学系 准教授)

先進医療の発展において,高機能薄膜材料の開発は,医療デバイスの高機能化の面で大きな期待がある.医療用材料は,主として人工物が用いられるが,これらの材料表面は,生体側から“異物”として認識され,生体環境に応じて一連の反応に曝される.それ故,医療用材料の開発は,生体適合性と生体機能性を両立させ,付加価値を高める表面設計が求められる.高機能薄膜材料の1つとして知られるダイヤモンド状炭素(DLC: Diamond-like Carbon)膜は,良好な血液適合性や細胞親和性を有することから,表面技術として期待され,近年,成膜方法の多様化に伴う高機能化が進んでいる.本講義では,DLCを中心に,高機能薄膜材料の医療応用について紹介する.

嶋津 秀昭(杏林大学 保健学部 臨床工学科 特任教授)

ME機器には循環系に関連したものが比較的多い。循環動態の計測に限っていえば血圧・血流がその中心であり、古くから様々な方法が開発されてきた。今回の講義では、教科書に記載されているような一般的な方法ではなく、近年、実用化されてきた新しい方法の原理や技術的な概要について説明する。また、脈波検出に関しては従来の方法を利用しながら新しい臨床情報を得るための理論的な背景などについて説明を行う。

10月3日(火)

篠田 俊雄(つくば国際大学 医療保健学部 医療技術学科 教授)

膜分離技術(精密濾過)を応用した膜型血漿交換は1970年代末にわが国で開発された治療法であり、当初、肝不全やMタンパク血症に適用されていた。その後、自己免疫疾患や薬物中毒、代謝性疾患、免疫調節の異常による疾患などでも有効性が確認され、適用が拡大してきた。疾患領域は消化器疾患、血液疾患、膠原病・自己免疫疾患、代謝性疾患(循環器疾患)、神経疾患、腎疾患、皮膚疾患など多岐にわたる。技術的にも単純血漿交換法(PE)から二重濾過血漿分離交換法(DFPP)や血漿吸着法(PA)が進展した。病因に関与する白血球分画を分離除去する血球成分除去療法(CAP)や循環不全を伴う臓器不全に適用される持続的血液浄化法(CHF、CHDF、CHDなど)などの技術を加えて、今日では維持血液透析を除くあらゆる血液浄化法を応用した治療がアフェレシス療法と呼ばれる。
 個人の見解であるが、もっとも劇的な効果がみられる疾患は血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)と家族性高コレステロール血症、重症筋無力症(MG)、敗血症性ショック、抗糸球体基底膜抗体(GBM)による急速進行性糸球体腎炎(RPGN)であり、次いで肝不全、ギラン・バレー症候群(GBS)、重症・治療抵抗性潰瘍性大腸炎、天疱瘡や類天疱瘡ではないかと考える。アフェレシス療法の適用疾患は比較的希少疾患であるため、RCTで有効性を証明することが困難である。RCTでの有効性のエビデンスがあるのはGBSやTTP、RCTでの実証はなく保険適応があるのがSLEによるRPGNである。一方、RCTでの有効性が実証されているにもかかわらず、まだ保険適応がないのが抗白血球細胞質抗体(ANCA)によるRPGNである。
 アフェレシス療法が適用される疾患は免疫能や循環動態が低下した状態にある場合が多いため、治療の施行にあたっては安全性に対する十分な配慮が必要である。清潔な治療環境において、接触感染やカテーテル関連感染への対策を強化して治療にあたる必要がある。循環動態に関しては治療効果がリスクを上回る場合に限り、十分な説明と同意を得た上で実施する必要があり、事前の慎重な検討を要する。専門医や専門臨床工学技士が不在の施設で実施する場合には、事前に専門家に相談することが肝要である。また、患者の病状や治療方針、治療の施行法について、治療にかかわるスタッフ間で十分に情報を共有することが事故防止につながる。また、担当医師によるリーダーシップと文書による明確な指示も不可欠である。

酒井 元気(東京電機大学 システムデザイン工学部 情報システム工学科 准教授)

モノとインターネットをつなぐ技術であるIoT (Internet of Things)は、医療の分野でも応用が期待されており、ペースメーカーや心電計のような生体モニターのIoTデバイス化が進んでいる。例えば、ペースメーカー患者は、3ヶ月毎に専門外来を訪れ機器の状態を検査する必要があり、この大きな負担を削減するためIoTの活用が検討されている。つまり、ペースメーカーをIoTデバイス化し、機器の状態をインターネット経由でチェックすることで、外来受診の回数を削減するわけである。今回は、ペースメーカーの例を初め、IoTが医療分野にどのように関わっているのか、近年の動向や今後の展望について述べる。

10月10日(火)

中山 剛(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 障害工学研究部 電子応用機器研究室 電子応用機器研究室長、主任研究官)

支援機器とは障害者・高齢者の活動・参加を支援するための機器の総称であり、福祉機器、リハビリテーション機器、補助具、又は補助機器とも称される。支援機器を有効に活用するためには、利用者の身体状況や環境等に合わせた適合という作業プロセスが重要となる。支援機器の適合のためには障害者のニーズをしっかりと把握することが最初のステップである。福祉の現場における支援機器の適合の事例を交えて障害者のニーズと支援機器を概説し、更に支援機器の定義や国際的な規格等の動向も合わせて紹介する。

増澤 徹(茨城大学 工学部 機械工学科 教授)

21世紀に入り,重症心不全患者の救命方法の一つとして連続流ポンプを使った体内植込型補助人工心臓の臨床適用が行われるようになってきた.その適用は当初の心臓移植ドナー心が見つかるまでの橋渡し(bridge use)から永久使用(destination therapy)へ移行しつつあると共に,女性,小児などのより小柄な患者への適用,長期の体外循環補助や全置換型人工心臓への応用と広がりつつある.しかし,人工心臓の課題である血液適合性は解決されたわけではなく,更なる技術開発が必要とされている.本講義では人工心臓の構造,現状について概説すると共に,人工心臓の最新技術の一つとして,良好な血液適合性を実現できる磁気浮上技術について解説する.

10月17日(火)

古賀 良彦(杏林大学 名誉教授)

抄録  最近のストレスの状況は以前とは異なってきている。主な要因はスマートフォンをはじめとするデジタル機器の職場や家庭における急速な普及である。調査をすると、ほぼ90パーセントの人が日常の生活の中で疲れを自覚している。特徴は心や体の疲ればかりでなく、社会生活を積極的に遂行する意欲が低下し生活の充足感が得られないことである。この傾向はとくにスマートフォンを長時間使用しているものに顕著である。このような、いわばデジタルライフ疲労ともいうべき状態から抜け出すヒントとして3つR、すなわちRest、Relaxation、Recreationを毎日の生活で実践することをお奨めする。とくに大事なのはRecreationであり、これは単に趣味や娯楽というより自分を創りなおすという意味である。食品や香りをはじめ自分を活かしストレスを防ぐ方法について具体的に紹介したい。

森 健策(名古屋大学 大学院情報学研究科 知能システム学専攻 教授)

本講演では、人工知能、とりわけ機械学習を利用した医用画像自動認識法とその結果を用いた診断治療支援手法について述べる。人工知能技術の一つとして近年ディープラーニング、畳み込みニューラルネットーワークなどの機械学習手法の注目が集まっている。医用画像の分野においても、解剖構造の自動認識など、コンピュータによる医用画像の自動認識について期待が高まっている。本稿では、内視鏡画像自動診断、CT画像自動理解などの取り上げ、医用画像分野における機械学習技術を紹介し、今後の展望について述べたい。

10月24日(火)

鎮西 清行(産業技術総合研究所 健康工学研究部門 副研究部門長 / 東京電機大学 工学研究科 客員教授)

医療機器のレギュラトリーサイエンス(RS)は,医工学の研究成果を普及させる上で欠かせない法規制に関する知識と,それのベースとなる科学的な考え方に関する新しいサイエンスである.
レギュラトリーサイエンスの知識は,製品の製造販売承認を取るためだけのものではない.むしろ,開発企画,その手前の基礎研究にたずさわる皆さんにこそ,必要なものである.
この講義では,医療機器などの開発から上市までの流れに沿って,法規制の概要(法規制で求められていること,医療機器の範囲,クラス分類,代表的な安全性要求項目,研究開発段階での規制など)を俯瞰して基礎知識を学ぶ.

大西 謙吾(東京電機大学 理工学部 理工学科 電子・機械工学系 准教授)

近年の電子技術,高機能材料技術,3次元造形加工技術により,人間の動きにより近い動きの再現,回復を支援する電子制御式の義肢装具の開発が進んでいます.本講義では,先端的な機能回復支援・機能代替機器として,筋電位等の生体信号や身体運動信号を操作信号として制御する人間-機械系の手法・技術に関する研究動向と,これらの機器の評価に関する研究事例を,義肢装具や身体装着型ロボットを中心に紹介します.なかでも福祉機器開発において工学者は機能面に注目しがちですが,人工の手足や補助機器を使い使用者が作業をしやすく,また社会参加しやすくするための視点が重要であり,共同研究者となるセラピストの評価方法についても紹介します.

11月7日(火)

小林 英津子(東京大学大学院 工学系研究科 精密工学専攻 准教授)

本講義では低侵襲手術支援ロボットシステムについて、これまでの研究の概要、ならびに、現在の最新の研究状況について紹介する。手術支援ロボットに関する研究は、機械工学、情報工学、そして、医学などの分野にまたがる学際的な研究分野である。通常のロボットとは異なり、外科分野におけるニーズに即したロボット開発、それにともなう、機械機構開発、情報処理機構開発が求められる。本講義では、これらを紹介すると共に、これからの低侵襲手術支援ロボットシステムの今後について講義する。

植野 彰規(東京電機大学 工学部 電気電子工学科 教授)

1970年代に提案された絶縁物電極をヒントに、2003年頃から演者が取り組み発展させてきた、容量型センシングに基づく心電図・呼吸・離着床・脈波の非接触・無拘束モニタリング技術について概説する。また、その他の応用事例として、非接触式のウェアラブル心電計やイベント心電図レコーダ、ウェアラブル筋電計や水中筋電計、高周波脳波計、非侵襲式神経電図計などについても紹介し、生体計測分野で広がりつつあるレノベーションの動向について説明する。

11月14日(火)

黒柳 能光(北里大学 名誉教授)

組織工学の主要な成分は、細胞と細胞成長因子と生体材料である。皮膚再生医療は最も実践的な分野である。この講座では組織工学製品を紹介する。人工皮膚は創傷被覆材と培養皮膚代替物の2つに分類される。創傷治癒を阻害する主要な原因は感染である。創傷治癒を阻害するもう一つの原因は細胞成長因子の欠損である。創傷治癒を促進するために研究者達は様々なタイプの人工皮膚の開発に挑戦している。黒柳らは抗菌剤あるいは細胞成長因子を含有した機能性創傷被覆材を開発した。さらに、種々の細胞成長因子を産生放出できる培養真皮を開発した。これらの組織工学製品は熱傷や難治性皮膚潰瘍の治療に有効であることが臨床研究により実証されている。

許 俊鋭(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター センター長)

内科治療に抵抗する重症心不全に対して、心臓移植および人工心臓治療が究極の治療となる。心臓移植や人工心臓治療は1960年代に始まり50年以上の歴史を持ち、欧米では既に標準的な重症心不全治療となっている。年間2200例以上の心臓移植が実施されている米国でも提供されるドナー心数に依存した心臓移植では全ての患者を救うことができず、2002年に保険償還された補助人工心臓によるDestination Therapy (DT)がこの10年間に長足の普及を見ている。2016年の米国INTERMACS統計では植込型LVAD登録数の50%以上がDTである。日本での心臓移植は年間50例程度に過ぎず、現在臨床治験中のDTが承認された暁には本邦における植込型LVADは飛躍的に増加するものと考えられる。

11月21日(火)

真田 弘美(東京大学大学院 医学系研究科 健康科学・看護学専攻 老年看護学 / 創傷看護学分野 教授)

日本は2025年には団塊の世代が75歳を向かえ、超高齢化率が世界一となることが予測されている。高齢者が幸せ (well-being) に暮らすためには、「治す」医療から、「支える」医療への転換が必要となり、地域における新しい医療体制の確立が喫緊の課題となっている。看護は、療養者の生活を全人的に支援する実践科学であり、まさに支える医療の中核をなす領域といえる。ここでは、療養者支援に必要な技術開発について看護学と理工学との協働で行っている研究例を踏まえ、その成果と課題について概説する。

髙瀬 義昌(医療法人社団 至髙会 たかせクリニック 理事長)

在宅医療は、医療施設で行う医療とは異なり、患者の家や高齢者施設などそれぞれ異なる環境において限られた医療資源をもとに行う医療である。検査器具等も十分に揃っていないため、症状から病気を推測して優先順位をつけ、薬物とケアで治療しながら診断を進める「診断推論・診断的治療」というアプローチが必要な場合が多く、薬剤師・訪問看護師・介護スタッフ・家族等と協働して行う「チーム・モニタリング」が不可欠である。今回の講座では在宅療養現場の実態と当院におけるICT活用実例に加えて「チーム・モニタリング」におけるICTの必要性について解説する。また、診断推論におけるAI活用の可能性についても触れる。

11月28日(火)

河野 隆二(横浜国立大学 未来情報通信医療社会基盤センター センター長 / 横浜国立大学 大学院工学研究院 教授)

「医療用無線BANやカプセル内視鏡等の先端医療ICT機器の研究開発から標準化、薬機法承認、人材育成、グローバルビジネス展開の包括的紹介」
先端情報通信技術(ICT)を活用した医療機器である、医療用無線ボディエリアネットワーク(BAN)および、BANで接続されたカプセル内視鏡等のバイタルセンサやリハビリロボット等のアクチュエータで構成される複合医療機器、さらにBANとネットワーククラウドとAIマイニングサーバーで構成されるプラットフォームの産学官連携による研究開発からプロトタイピング、国際標準化、グローバルビジネス、薬機法承認について、解説する。また、神奈川県「かながわ医療機器レキュラトリーサイエンスセンター」やフィンランド・ヘルスケア医療ビジネス等の活動も紹介する。これを通じて、共同研究開発、標準化、ビジネスのパートナーを募集する。

翁長 武志(オリンパス株式会社 技術開発部門 医療第2開発本部 治療機器開発部 エネルギー機器1グループ)

内視鏡外科手術は、従来の大きくお腹を開く開腹手術に比べ、患者さんの術後の痛みが少なく、入院期間も短いことなどにより、適用範囲が広がり手術件数が増えている。内視鏡外科手術においては、組織を切離するときに、出血を防ぐことが重要となる。これを解決する為、エネルギーデバイスと呼ばれる機器が登場し、内視鏡外科手術の発展に大きく貢献してきた。エネルギーデバイスは、内視鏡外科手術においてドクターの手となるため、組織の切離の他にも多くの機能が求められる。本講義では、エネルギーデバイスの機能と特徴について説明を行う。

12月5日(火)

福井 康裕(東京電機大学ME会 会長 / 東京電機大学 名誉教授)

東京電機大学では、1977年以来新しく発展してきたME(Medical Engineering:医用工学)について、公開講座を設けて、今年で第41回目となる。まず、このME講座の当初からの変遷と歴史について概説する。さらに、今回の主テーマである「医工連携」に関して概説する。安倍内閣の掲げる成長戦略の大きな柱として医療機器開発がある。医療機器開発は、日本が得意としてきた「ものづくり」技術を生かせる分野である。特に、次世代型医療機器の開発には、創造的な研究開発を推進することが求められ、それには医学と工学の「医工連携」が不可欠である。この課題について現状・動向・問題などについて説明する。講座を通し、将来に向かってMEの技術者が数においても、質においてもますます充実することを期待したい。

修了式

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