平成30年度:第42回カリキュラム

第42回(平成30年度)東京電機大学ME講座 講師・日程・題目

10月2日(火)

荒船 龍彦(東京電機大学 理工学部 理工学科 電子工学系 准教授)

生体を数値モデルで再現するin silico研究(生体シミュレーション研究)は、生体機能の解明にフォーカスを当てた従来の研究に留まらず、現在飛躍的に発展しその活躍の場を広げています。2013年のFDA、NIH主催のin silicoワークショップを皮切りに、米国や欧州学会が医療機器開発にin silicoを活用するガイドラインを策定し、わが国でも次世代医療機器ガイドラインに記載が盛り込まれるなど、その重要度は増しています。いま海外で先行するin silicoと医療機器開発・評価の最新動向の紹介と、わが国が何をすべきか、解説します。

黒柳 能光(北里大学 名誉教授)

再生医療の基盤となる組織工学の主要な成分は、細胞と細胞成長因子と生体材料である。ES細胞やiPS細胞を使用した臨床研究は、腫瘍形成の有無を調べる必要があり試験的な段階である。一方、皮膚組織由来の細胞を大量培養して製造できる培養表皮や培養真皮や培養皮膚は1980年代に製品化された。しかしながら、科学の進歩と実用化には解決すべき課題が多く、最先端医療を通常の医療として普及させることは容易ではない。難治性皮膚潰瘍や熱傷の治癒を阻害する主要な原因は細胞成長因子の欠如である。創傷治癒を促進するために各種の細胞成長因子製剤も製品化されている。本講義は創傷治癒の機序を材料設計に導入した皮膚再生医療製品について解説する。

10月9日(火)

中山 剛(国立研究機関勤務)

支援機器とは障害者・高齢者の活動・参加を支援するための機器の総称であり、福祉機器、リハビリテーション機器、補助具、又は補助機器とも称される。支援機器を有効に活用するためには、利用者の身体状況や環境等に合わせた適合という作業プロセスが重要となる。支援機器の適合のためには障害者のニーズをしっかりと把握することが最初のステップである。福祉の現場における支援機器の適合の事例を交えて障害者のニーズと支援機器を概説し、更に支援機器の定義や国際的な規格等の動向も合わせて紹介する。

大西 謙吾(東京電機大学 理工学部 理工学科 電子工学系 准教授)

近年の電子技術、高機能材料技術、3次元造形加工技術により、人間の動きにより近い動きの再現,回復を支援する電子制御式の義肢装具の開発が進んでいます。本講義では、先端的な機能回復支援・機能代替機器として、筋電位等の生体信号や身体運動信号を操作信号として制御する人間-機械系の手法・技術に関する研究動向と、これらの機器の評価に関する研究事例を、義肢装具や身体装着型ロボットを中心に紹介します。なかでも福祉機器開発において工学者は機能面に注目しがちですが、人工の手足や補助機器を使い使用者が作業をしやすく、また社会参加しやすくするための視点が重要であり、共同研究者となるセラピストの評価方法についても紹介します。

10月16日(火)

植野 彰規(東京電機大学 工学部 電気電子工学科 教授)

1970年代に提案された絶縁物電極をヒントに、2003年頃から演者が取り組み発展させてきた、敷布電極センサに基づく心電図・呼吸・離着床行動・脈動の非接触・無拘束モニタリング技術について概説する。また、類似の要素技術を応用した事例として、非接触式のウェアラブル心電計や運転シート組み込み心電計、ウェアラブル筋電計や水中筋電計、枕型眼電計、非接触脈動伝播時間計、非侵襲式神経電図計などについても紹介する。時間的な余裕があれば、他の研究グループの研究動向について説明する。

森 健策(名古屋大学 大学院情報学研究科 知能システム学専攻 教授 ・ 名古屋大学情報基盤センター長)

本講演では、人工知能 (ArtificialIntelligence)、とりわけ、機械学習と呼ばれる技術を用いた医療支援について述べる。ここでは、機械学習の概念とその仕組みの基礎を解説し、それらが医療支援にどのように利用されるのかを示す。畳み込みニューラルネットワークなどDeepLearningの基礎的な手法を説明したのち、それらを用いた内視鏡自動診断、CT画像自動診断、解剖構造理解による手術支援などの応用を例示する。基礎と実際の応用とを同時に学修することで、AI時代における医療の今後のありかたを読み解く力をつけることを目指す。

10月23日(火)

鎮西 清行(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 健康工学研究部門 副研究部門長)

医療機器のレギュラトリーサイエンス(RS)は、医工学の研究成果を普及させる上で欠かせない薬事法はじめ関連規制に関する知識と、それのベースとなる科学的な考え方に関する新しいサイエンスである。
レギュラトリーサイエンスの知識は、製品の製造販売承認を取るための手練手管ではない。むしろ、開発企画、その手前の基礎研究にたずさわる皆さんにこそ、必要な「ものの考え方」である。
この講義では、医療機器などの開発から上市までの流れに沿って、法規制の概要(法規制で求められていること、医療機器の範囲、クラス分類、臨床研究と治験、治験のデザイン、代表的な安全性要求項目など)を俯瞰して基礎知識を得ると共に、最近のトピックである人工知能の医療機器応用につきレギュラトリーサイエンスの視線で解説する。

本間 章彦(東京電機大学 理工学部 理工学科 電子工学系 教授)

10月30日(火)

翁長 武志(オリンパス株式会社 技術開発部門 医療第2開発本部 治療機器開発部 エネルギー機器1G)

内視鏡外科手術は、従来の大きくお腹を開く開腹手術に比べ、患者さんの術後の痛みが少なく、入院期間も短いことなどにより、適用範囲が広がり手術件数が増えている。内視鏡外科手術においては、組織を切離するときに、出血を防ぐことが重要となる。これを解決する為、エネルギーデバイスと呼ばれる機器が登場し、内視鏡外科手術の発展に大きく貢献してきた。エネルギーデバイスは、内視鏡外科手術においてドクターの手となるため、組織の切離の他にも多くの機能が求められる。本講義では、エネルギーデバイスの機能と特徴について説明を行う。

久保田 博南(ケイ・アンド・ケイ ジャパン株式会社 代表取締役)

生体情報モニタの歴史は50年余り。その間に開発された生体情報モニタに使われている技術要素を時系列的に述べる。それらの技術要素が現在の医療現場でどう役立っているか、について解説することを主軸とする。また、現時点での医療現場からのニーズへの対応状況や課題についても考察し、将来の生体情報モニタリングはどういう方向に向かうのかについても言及する。こうした歴史を俯瞰しつつ、とくに今後のAIやIoTとどういう関りを持つべきかについても追及する。

11月13日(火)

許 俊鋭(東京都健康長寿医療センター センター長)

内科治療抵抗性の重症心不全に対する究極的治療は心臓移植および人工心臓治療である。年間2500例以上の心臓移植が実施される米国でもドナー心不足は深刻であり、植込型LVADによるDestination Therapy (DT)が長足の普及を見ている。2016年の米国INTERMACS統計では植込型LVAD登録数の50%以上がDTである。日本では650例以上の心臓移植待機患者に対し年間移植数は50例程度に過ぎず、現在臨床治験中のDTが承認された暁には植込型LVAD治療は飛躍的に増加するであろう。昨年保険償還を得たカテーテル型VAD(Impella)は内科医にも実施可能なVAD治療として期待されている。

南部 恭二郎(早稲田大学 共同大学院 非常勤講師)

対象は、MRI装置の近くで実験や工作などの作業をおこなう可能性がある方です。特別な知識を持っていることは前提にしません。なお、MRI装置を設置したり操作したりする専門職の方は対象ではありません。
MRI装置は常時強い磁場を作っているので、その周囲は日常では経験しないさまざまな現象が発生する異常空間になっています。作業を安全におこなって目的を達成するためには、強い磁場がどんな影響をおよぼすのかをよく理解しておく必要があります。そこで、磁場が身近にあるいろいろな品物に対してどういう作用をするかについて、概要を定性的に把握することを目的とします。

11月20日(火)

中村 真人(富山大学 大学院 理工学研究部(工学)教授)

20世紀、臓器不全の治療として臓器を取り換える臓器移植療法が生み出され、臓器不全治療の切り札となった。しかし、21世紀、ドナー不足のため待機時間の長期化は世界で深刻化し、ドナー臓器を待つ医療はもはや限界にきている。この解決の道は科学の力で臓器を創り出すしかない。医工学はこれまで様々な診断機器、治療機器を世に出し、医療を革新してきた。医工学には新時代を創るポテンシャルがある。今、臨床では再生医療の時代が始まった。細胞から生きた臓器を作るための医工学が必要である。再生医療の時代は医工学が先導する。

中島 勧(東京大学医学部附属病院 医療機器管理部 部長)

医療の最重要な役割は病気の治療であるが、他にも重要なことがある。今は健康な人でも、家族や友人が病気になった時に、信頼できる医療機関にかかれることが保障されていなければ、安心して生活できない。医療は地域社会に住む人たちに安心感を与える役割も担っており、安心感を損ねる出来事をなくすのが、医療における安全管理の最大の役割である。
今では当たり前のように重視されている医療安全管理も、注目され始めて20年も経っていない。いつ何をきっかけに医療安全管理が注目され、その後どのような経緯で医療事故調査制度が作られたのか。近年急速に注目を集めつつある画像所見の確認不足も併せて、解説する。

11月27日(火)

守本 祐司(防衛医科大学校 生理学講座 教授)

光線力学療法(PDT)において光源出力をごく微弱(従来の1/1000程度)にする一方、従来よりもはるかに長時間かけて照射(従来の1000倍程度)する、新しいPDTが今世紀に入って提唱され(メトロノミックPDT(mPDT))、深部臓器がん(肝がん、膵がんなど)への新たな医療技術として注目されている。
演者らは最近、シールのように貼り付けることができて、無線で給電可能な、体内完全埋め込み型の発光デバイスを創製した。さらにこれをがんモデル動物に埋め込んでmPDTを行い、腫瘍を縮退させることに成功した。
講義では、創製した発光デバイスならびmPDTにおける知見について紹介したい。

村垣 善浩(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 先端工学外科学分野/医学部 脳神経外科(兼任)教授)

情報誘導手術は、外科医の経験による判断ではなく客観的な可視情報による意思決定を行う手術である。摘出率と予後との関連が示唆された悪性脳腫瘍(神経膠腫)を主対象に3種情報を基に判断する。
残存腫瘍を同定する術中MRIやナビゲーションから解剖学的情報を取得し、覚醒下手術や運動誘発電位等による機能的情報、術中迅速診断や蛍光診断から組織学的情報を取得する。18年で1800例以上の悪性脳腫瘍摘出術を施行し平均摘出率90%を達成した。
物理力やロボットで治療を行う精密誘導治療に発展させるために、現在、すべての機器をネットワークで接続したスマート治療室SCOTを開発中であり、近未来型のシステムを紹介する。

12月4日(火)

河野 隆二(横浜国立大学 大学院 工学研究院 教授)

先端情報通信技術(ICT)を活用した医療機器である、医療用無線ボディエリアネットワーク(BAN)および、BANで接続されたカプセル内視鏡等のバイタルセンサやリハビリロボット等のアクチュエータで構成される複合医療システム、さらにBANとネットワーククラウドとAIマイニングサーバーで構成されるプラットフォームによる機械学習に基づく医療ビッグデータ解析の研究開発からプロトタイピング、国際標準化、産学官連携コンソーシアム(アライアンス)による薬機法承認、グローバルビジネス、クラウドファンディングについて、解説する。また、神奈川県受託事業「かながわ医療機器レキュラトリーサイエンスセンター」やフィンランド・ヘルスケア医療ビジネス等の活動も紹介する。これを通じて、共同研究開発、標準化、ビジネスのパートナーを募集する。

森 武俊(東京大学 大学院医学系研究科 ライフサポート技術開発学(モルテン)寄付講座 特任教授)

日本は2025年には団塊の世代が75歳を迎え、超高齢化率が世界一となることが予測されている。高齢者が幸せ (Well-Being) に暮らすためには、「治す」医療から「支える」医療へのパラダイムシフトが必要となり、地域における新しい医療体制の確立が課題となっている。看護は、患者の生活を全人的に支援する実践科学であり、まさに支える医療の中核をなす領域といえる。工学研究者が看護学研究者・看護師と協働することにより推進している技術開発について、療養者支援のための看護理工学研究例の位置づけで、その成果と課題について概説する。

12月11日(火)

田中 慶太(東京電機大学 理工学部 理工学科 電子工学系 准教授)

近年、種々の特徴を持った脳機能計測法が利用されている。ここでは、磁気を用いたイメージング法である脳磁図を取り上げる。脳磁図は脳機能の非侵襲的計測法のひとつで、頭部を覆う数百点の超伝導磁束量子干渉計(SQUID)により計測される。この特徴として、脳磁図は脳波に比べ介在組織(頭皮や頭蓋骨など)の影響を受けにくいため、センサの感度は近傍の神経活動に対して選択的に高くなる。よって、特に大脳皮質に活動源がある場合の精密な測定に適していると考えられている。本講義では、脳磁図が捉えている脳内神経機序や、我々が取り組んでいる脳磁図を用いた高次脳機能評価の基礎的研究内容を紹介する。

修了式

※都合により変更になる場合があります

関連コンテンツ