2019年度:第43回カリキュラム

第43回(2019年度)東京電機大学ME講座 講師・日程・題目

9月24日(火)

荒船 龍彦(東京電機大学 理工学部 理工学科 電子工学系 准教授)

生体を数値モデルで再現するin silico研究(生体シミュレーション研究)は、生体機能の解明にフォーカスを当てた従来の研究に留まらず、現在飛躍的に発展しその活躍の場を広げています。2013年のFDA、NIH主催のin silicoワークショップを皮切りに、米国や欧州学会が医療機器開発にin silicoを活用するガイドラインを策定し、わが国でも次世代医療機器ガイドラインに記載が盛り込まれるなど、その重要度は増しています。海外で先行するin silicoと医療機器開発・評価の最新動向を,in silicoを実際に活用した機器の具体例を交えながら解説します。

植野 彰規(東京電機大学 工学部 電気電子工学科 教授)

1970年代に提案された絶縁物電極をヒントに、2003年頃から演者が取り組み発展させてきた、敷布電極センサに基づく心電図・呼吸・離着床行動・脈動の非接触・無拘束モニタリング技術について概説する。また、類似の要素技術を応用した事例として、非接触式のウェアラブル心電計や運転シート組み込み心電計、ウェアラブル筋電計や水中筋電計、枕型眼電計、非接触脈動伝播時間計、非侵襲式神経電図計などについても紹介する。時間的な余裕があれば、他の研究グループの研究動向について説明する。

10月1日(火)

矢口 俊之(東京電機大学 理工学部 理工学科 電子工学系 准教授)

再生医療は日進月歩で発展している分野である.これまでにもiPS細胞をはじめとしていくつものブレークスルーはあり,臨床での応用も徐々に開始されているが,臓器のような機能を備えた再生組織の構築等については未だ課題が山積している.その中でも組織培養の新しい技術の開発に関しては工学的知見が介在する比重も高く,さらなる進展が期待されている.本講義では工学分野から再生医療分野に対しての基礎的ではあるがいくつかの具体的な取り組みを紹介し,組織培養に関して概説する.

木村 剛(東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 准教授)

生命科学と工学の融合によって新しい生体組織・器官を作製する概念に提唱され、現在の再生医療において必要な技術となっている。当初より、細胞、増殖因子、足場材料を組み合わせて構築された生体組織の応用が検討されている。足場材料としては生体内吸収性のスポンジや繊維性材料が用いられているが、最近では、生体組織から細胞のみを除去した細胞外マトリックスである脱細胞化生体組織が良好な生体適合性を示し、欧米を中心として開発が進められている。さらに、足場材料のみを生体組織に移植して組織を修復するin situ組織再生など新しい概念が提案され、ますます進展している。本講座では、このような再生医療における組織工学の最近の進歩について概説する。

10月8日(火)

中山 剛(国立研究機関勤務)

支援機器とは障害者・高齢者の活動・参加を支援するための機器の総称であり、福祉機器、リハビリテーション機器、補助具、又は補助機器とも称される。支援機器を有効に活用するためには、利用者の身体状況や環境等に合わせた適合という作業プロセスが重要となる。支援機器の適合のためには障害者のニーズをしっかりと把握することが最初のステップである。福祉の現場における支援機器の適合の事例を交えて障害者のニーズと支援機器を概説し、更に支援機器の定義や国際的な規格等の動向も合わせて紹介する。

三井 和幸(東京電機大学 工学部 先端機械工学科 教授)

ロボット開発など、最近のメカトロ技術の発展にはめざましいものがある。このメカトロ技術は産業界への応用のみならず、リハビリテーションの分野への応用も進み始めており、最近ではパワーアシストスーツ技術のリハビリテーション用機器への応用など、大学や研究機関での研究開発のみならず、企業による実用化を目指した機器開発が進められている。本講では、企業により製品化されている最新機器、特に歩行支援用の機器を紹介するとともに、演者の研究室で開発した技術を基に企業が製品化する新たな歩行支援用リハビリテーション機器についても紹介する。

10月15日(火)

許 俊鋭(東京都健康長寿医療センター センター長)

重症心不全に対する究極的治療は心臓移植および人工心臓治療である。年間2500例以上の心臓移植が実施される米国でもドナー心不足は深刻で、植込型LVADによるDestination Therapy (DT)が長足の普及を見ている。2018年の米国INTERMACS統計では植込型LVAD登録数(2014~2017)の50%がDTである。日本の2018年の心臓移植数は55例に対し2019年7月末の心臓移植待機は769症例で、BTT待機期間は4年に及ぶ。本邦でDTが承認された暁には植込型LVAD治療は飛躍的に増加するであろう。一方、カテーテル型VAD(Impella)は症例数が飛躍的に伸びており、内科医にも実施可能なVAD治療として普及しつつある。

本間 章彦(東京電機大学 理工学部 理工学科 電子工学系 教授)

人工心臓は、送脱血管、血液ポンプ、駆動装置、バッテリー、エネルギー伝送、各種センサ技術など様々な先端要素技術の集合体からなるシステムです。一度、体内へ埋め込まれた人工心臓は、再度取り出してメンテナンスすることは困難であり、システムのトラブルは患者の生命に直結することになります。そのため、抗血栓性、抗溶血性、解剖学的適合性、耐久性などに関する様々な試験を行うことでシステムの問題点を抽出し、それに対する十分な対策を事前に行っておくことが求められます。本講義では、人工心臓システムが抱える様々な課題を解説するとともに、それらを解決するためにどのような技術開発が求められているのかについて講義を行います。

10月29日(火)

森 武俊(東京大学 大学院医学系研究科 ライフサポート技術開発学(モルテン)寄付講座 特任教授)

日本は2025年には団塊の世代が75歳を迎え、超高齢化率が世界一となることが予測されている。高齢者が幸せ (Well-Being) に暮らすためには、「治す」医療から「支える」医療へのパラダイムシフトが必要となり、地域における新しい医療体制の確立が課題となっている。看護は、患者の生活を全人的に支援する実践科学であり、まさにこの「支える」医療の中核をなす領域といえる。工学研究者が看護師・医療系研究者ならびに企業と協働することにより推進している技術開発について、療養者支援のための看護理工学研究例の位置づけで、その成果と課題について概説する。

鈴木 真 (東京電機大学 システムデザイン工学部 デザイン工学科 教授)

情報通信技術(ICT)は今や無くてはならない社会基盤として普及しており、これが支障なく利用できることは高齢者や障害者を含む全ての人々の社会参加に必須である。そのためにアクセシビリティの概念がまとめられ様々な取り組みが行われてきた。このようなICTの利用により問題が軽減されQOLを向上できた人々がいる一方で、新たなデバイスの登場により不自由が顕在化してしまった人も存在する。ここではインタフェースを中心にICTの進歩に伴ってアクセシビリティの考え方がどのように変遷してきたか概説する。

11月12日(火)

森 健策(名古屋大学 大学院情報学研究科 知能システム学専攻 教授 ・ 名古屋大学情報基盤センター長)

本講演では、人工知能 (Artificial Intelligence)、とりわけ、機械学習と呼ばれる技術を用いた医療支援について述べる。ここでは、機械学習の概念とその仕組みの基礎を解説し、それらが医療支援にどのように利用されるのかを示す。畳み込みニューラルネットワークなどDeepLearningの基礎的な手法を説明したのち、それらを用いた内視鏡自動診断、CT画像自動診断、解剖構造理解による手術支援などの応用を例示する。データベースが、AIの性能にどのような影響を与えるかも示す。基礎と実際の応用とを同時に学修することで、AI時代における医療の今後のありかたを読み解く力をつけることを目指す。

小林 英津子(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 先端工学外科学 准教授)

本講義では低侵襲手術支援ロボットシステムについて、これまでの研究の概要、ならびに、現在の最新の研究状況について紹介する。手術支援ロボットに関する研究は、機械工学、情報工学、そして、医学などの分野にまたがる学際的な研究分野である。通常のロボットとは異なり、外科分野におけるニーズに即したロボット開発、それにともなう、機械機構開発、情報処理機構開発が求められる。本講義では、これらを紹介すると共に、これからの低侵襲手術支援ロボットシステムの今後について講義する。

11月19日(火)

佐久間 一郎(東京大学大学院 工学系研究科附属 医療福祉工学開発評価研究センター 教授)

医用電気機器・システムの安全規格にはIEC60601シリーズなどの国際規格があり,本邦におけるJISも基本的にこれに準じている.これらの規格は規制当局により参照され,医療機器承認のための要求事項となることもある.ICT,AI応用医療機器といっても,一般の医療機器の考え方と同様に安全性実現はリスクマネジメントが基本となる.しかし機器間の相互接続性,製造者が製造に関与しなOff-the-shelfソフトウェアや,最新の規格に適合していない過去に開発されたソフトウェア資産の活用に関する課題,サイバーセキュリティーに関する問題など,従来の医療機器とは異なる観点での考察が必要となる.講義では最近の規格動向やガイドラインを紹介しつつこの問題を考える.

中島 勧(埼玉医科大学病院 医療安全管理学 教授)

医療の最重要な役割は病気の治療であるが、他にも重要なことがある。今は健康な人でも、家族や友人が病気になった時に、信頼できる医療機関にかかれることが保障されていなければ、安心して生活できない。医療は地域社会に住む人たちに安心感を与える役割も担っており、安心感を損ねる出来事をなくすのが、医療における安全管理の最大の役割である。
今では当たり前のように重視されている医療安全管理も、注目され始めて20年も経っていない。いつ何をきっかけに医療安全管理が注目され、その後どのような経緯で医療事故調査制度が作られたのか。近年必要性が増している医療機器安全管理の現状も併せて解説する。

11月26日(火)

桑名 健太(東京電機大学 工学部 先端機械工学科 准教授)

内視鏡下手術は,体にあけた数個の小さな穴を介して,細長い棒形状の内視鏡や手術器具を使って体内を治療する手術である.患者に対する負担が少なく,入院期間が短くなるという利点がある一方で,使用する内視鏡や手術器具の特徴から,手術中の視野が狭い,奥行き感が得られない,触った感覚が得られない,等の課題があり,医師にとっては負担の大きな手術となっている.そのため,外科
医をサポートするデバイスが求められる.本講義では,演者が研究で活用している技術の1つであるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術の概要を説明し,MEMS力センサを活用した臓器の硬さ計測が可能なセンサ付鉗子システムをはじめとした手術支援デバイスの研究を紹介する.

村垣 善浩(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 先端工学外科学分野 教授)

情報誘導手術は、外科医の経験による判断ではなく客観的な可視情報による意思決定を行う手術である。摘出率と予後との関連が示唆された悪性脳腫瘍(神経膠腫)を主対象に3種情報を基に判断する。
残存腫瘍を同定する術中MRIやナビゲーションから解剖学的情報を取得し、覚醒下手術や運動誘発電位等による機能的情報、術中迅速診断や蛍光診断から組織学的情報を取得する。18年で1800例以上の悪性脳腫瘍摘出術を施行し平均摘出率90%を達成した。
物理力やロボットで治療を行う精密誘導治療に発展させるために、現在、すべての機器をネットワークで接続したスマート治療室SCOTを開発中であり、近未来型のシステムを紹介する。

12月3日(火)

酒井 元気(東京電機大学 システムデザイン工学部 情報システム工学科 准教授)

今回のME講座では、以下の2テーマについて解説を行う。

1.医療分野におけるIoT
モノとインターネットをつなぐ技術であるIoT (Internet of Things)は、医療の分野でも応用が期待されており、ペースメーカーや心電計のような生体モニターのIoTデバイス化が進んでいる。今回は、IoTが医療分野にどのように関わっているのか、近年の動向や今後の展望について述べる。

2.教育現場における生体情報の活用
近年、簡易的に計測できる携帯型生体情報計測器を利用する機会が増えて来た。そのような携帯型計測器を利用し、心拍変動、脳活動、瞳孔径などの情報を得ることで、ユーザーの精神状態、感性的な情報を知ることができる。今回は、教育現場での学習効果向上を目的とした生体情報の活用例を紹介する。

宮脇 富士夫(東京電機大学 理工学部 理工学科電子工学系 教授)

遺伝子組換え動物作製の第一歩は目的とする外来DNAの細胞内への導入である。この遺伝子導入法には何種類かあり、ターゲットとなる細胞の種類や大きさ、導入DNAのサイズなどに応じて使い分けられている。本講義では、まずそれぞれの遺伝子導入法の長所・短所について概説する。次に、講義の主題であるマイクロインジェクション法の中で最もオーソドックな「前核マイクロインジェクション法」についてまず解説し、講演者が開発した「振動型マイクロインジェクション・システム」や、講演者が考案した「前核間細胞質マイクロインジェクション法」(巨大なDNA断片の導入を容易にする可能性の高い手法)についても紹介する。

12月10日(火)

内川 義則(東京電機大学 理工学部 理工学科電子工学系 教授)

BMIやBCI技術の更なる高度化において、ヒトの脳波(EEG)や脳磁図(MEG)の中から時間的に変動するヒトの情動や意思などの内的状態を推測し、制御対象となる電子機械装置の制御信号にリアルタイムで変換できる装置、すなわち、ヒトの状態を知り、その状態に応じて動作するような人間適応型の電子機械(HAM: Human Adaptive Mechatronics)用のインターフェースデバイスの開発が求められています。本講座では、この実現への基礎技術であるMEG装置を含む生体磁気計測用SQUID磁束計の開発、および、EEGやMEGの計測に基づく、HAM用インターフェースデバイス開発に向けた現状と研究例を紹介します。

修了式

※都合により変更になる場合があります

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