平成28年度:第40回カリキュラム

第40回(平成28年度)東京電機大学ME講座 講師・日程・題目

9月27日(火)

植野 彰規(東京電機大学 工学部 電気電子工学科 教授)

1970年代に提案された絶縁物電極をヒントに、2003年頃から演者が取り組み発展させてきた、容量型センシングに基づく心電図・呼吸・離着床・脈波の非接触・無拘束モニタリング技術について概説する。また、その他の応用事例として、非接触式のウェアラブル心電計やイベント心電図レコーダ、ウェアラブル筋電計や水中筋電計、高周波脳波計、非侵襲式神経電図計などについても紹介し、生体計測分野で広がりつつあるレノベーションの動向について説明する。

山下 和彦(東京医療保健大学 医療保健学部 医療情報学科 教授)

アブストラクト
超高齢社会に伴い慢性疾患や関節疾患、転倒骨折などが社会的問題となっている。疾病の予防に加え、日常生活機能にまで視野に入れると歩行機能を高めることが健康寿命の延伸や楽しい生活を送る上で重要である。我々は、高齢者の転倒予防や日常生活の維持に必要な身体機能である下肢筋力、歩行機能等を定量的に評価する計測システムを開発し、地域で活用してきた。さらに、歩行を推進するために通信機能付き活動量計を用いた健康支援システムを開発し、効果を検証してきた。本講座では、これらの成果・将来展望を含めて、これからの高齢者の健康支援に必要な要素についてお話しする。

10月4日(火)

髙瀬 義昌(医療法人社団 至高会 たかせクリニック理事長)

これからの在宅医療において、キーワードとなるのは「診断推論」や「薬とケアの最適化」、「多職種協働」などであり、その実践においてはICT(情報通信技術)の活用が大きく寄与していくと考えられる。SNSにおいて患者ごとに専用ページをつくり、そこに情報を書き込む形で運用するコミュニケーションツールから、電子カルテと連動し診療情報のやりとりができるものまで、様々な連携の形があり、運用されている。さらに、自然言語を解釈し、仮説を生成し、経験から学習していく人工知能により、診断推論から適切な薬物・栄養療法の選択まで行うコンピュータの研究も行われており、膨大な医療情報の利活用が課題となっている。

鈴木 志保子(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部 栄養学科 教授)

健康、食生活、栄養に関する多くの情報が日々提供される。その情報を自分にとって必要か不必要か、必要な場合には、どのように活用すべきかを決定するためには知識が必要となる。情報が多岐にわたるからこそ、自分の身体の状態を知っていること(健診結果の理解)とともに、基本的な知識を広く習得していなければ情報を活用できないともいえる。今回、この講義から、健康や食生活の考え方について基本的な知識を習得するとともに、その活用について講義する。

10月11日(火)

河合 俊宏(埼玉県総合リハビリテーションセンター 相談部 福祉工学担当 主任)

生活をより快適にするために、道具・機器が開発されている。身体障害者に対しても「福祉機器」と呼ばれる機器が開発されているが、汎用化と個別適合・適用の点から、なかなか製品とならない場合が多い。
病院内での研究部門として、整形外科・神経内科・リハビリテーション・看護との連携と、中小企業支援経験から、どのようにしてニーズを顕在化し、試作し、どの法律・施策とマッチングしてゆくのかを、課題とともに、ご紹介したい。

許 俊鋭(東京都健康長寿医療センター センター長)

心不全の内科治療予後は進行癌と同じくらい不良で、最大限の内科治療で心不全が改善しない場合は心臓移植および人工心臓治療が究極の治療手段となる。心臓移植や人工心臓治療は1960年代に始まり、今日欧米では標準的な重症心不全治療となっているが、日本ではいまだ標準的重症心不全治療とはなり得ていない。米国で2002年に保険償還された補助人工心臓によるDestination Therapy (DT)がこの10年間に欧米では長足の普及を見ている。日本でも平成28年度にHeartMate II DT臨床治験が開始され、心臓移植が極端に少ない日本ではDT導入により多くの重症心不全症例が救われることが期待される。

10月18日(火)

三宅 琢(東京大学 先端科学技術研究センター 人工支援工学 特任研究員)

これまでの視覚障害者に対する補助具に当たるロービジョンエイドに加えて、ICT(Information and Communication Technology)機器の活用は、視覚障害者が情報障害者に陥ることを予防する上でとても重要な意味を持つ。私はこれらのICT機器を用いたロービジョンケアをデジタルビジョンケアと称し、医療や就労の分野において眼科医や産業医の立場で実践してきた。
デジタルビジョンケアは、視覚障害者が情報へのアクセス障害に陥ってしまうことを軽減し、自立して情報を入手発信できるようになる。日本は既に情報社会であり、視覚障害者への情報保障としてのICTデバイスによる情報ケアも一つの医療の形であると言え、本講では最新の現状とその意義について解説する。

中村 真人(富山大学大学院 理工学研究部(工学) (工学部生命工学科) 教授)

20世紀、臓器不全の治療として臓器を取り換える臓器移植療法が生み出された。臓器不全治療の切り札となったが、21世紀、ドナー不足、待機時間の長期化は世界的にも深刻化し、臓器を待つ医療は限界にきている。この緊喫の問題の解決の道はただ一つ。科学技術を進歩させ、臓器は待つのではなく科学の力で創る時代に向って進む以外にはない。医工学はこれまで様々な診断機器、治療機器を世に出し、医療を革新してきた。医工学には新時代を創り拓くポテンシャルがある。一方、ヒト遺伝子解読、iPS細胞の発明など、細胞から生きた臓器を作る再生医療の道が開かれつつある。ポストiPS細胞時代の再生医療への医工学による取り組みを概説し展望する。

10月25日(火)

守本 祐司(防衛医大学校 分子生体制御学 准教授)

ある種の感光色素に光を照射すると活性酸素が発生して微生物の増殖が抑制される。
光線力学反応は100年以上前から知られている現象だ。
これをがん治療へと応用した光線力学療法(PDT)は、本邦ではすでに20年以上前から保険収載されている。
超高齢化の進むわが国の医療現場では、標準的がん治療(手術、化学・放射線療法)に比して低侵襲治療であるPDTへの期待は高い。
最近、あらたに二種類の疾患に対して保険適応が認められ、ふたたび脚光を浴びはじめている。
講義ではPDTに関連する最新の治療技術について概説したい。

鎮西 清行(産業技術総合研究所 健康工学研究部門 副研究部門長/東京電機大学 工学系研究科 客員教授)

医療機器のレギュラトリーサイエンス(RS)は、医工学の研究成果を普及させる上で欠かせない薬事法規制に関する知識と、それのベースとなる科学的な考え方に関する新しいサイエンスである。
レギュラトリーサイエンスの知識は、製品の製造販売承認を取るためだけのものではない。むしろ、開発企画,その手前の基礎研究にたずさわる皆さんにこそ、必要なものである。
この講義では,医療機器などの開発から上市までの流れに沿って、法規制の概要(法規制で求められていること、医療機器の範囲,クラス分類,臨床研究と治験,治験のデザイン,代表的な安全性要求項目など)を俯瞰して基礎知識を得ると共に、動物実験や臨床試験を減少させる事が期待されるin vitro試験や数値計算・模型を用いる試験法の技術につき紹介する。

11月8日(火)

真田 弘美(東京大学大学院 医学系研究科 健康科学・看護学専攻 老年看護学/創傷看護学分野 教授)

日本は2025年には団塊の世代が75歳を向かえ、超高齢化率が世界一となることが予測されている。高齢者が幸せ (well-being) に暮らすためには、「治す」医療から、「支える」医療への転換が必要となり、地域における新しい医療体制の確立が喫緊の課題となっている。看護は、療養者の生活を全人的に支援する実践科学であり、まさに支える医療の中核をなす領域といえる。ここでは、療養者支援に必要な技術開発について看護学と理工学との協働で行っている研究例を踏まえ、その成果と課題について概説する。

根本 幾(東京電機大学 情報環境学部 情報環境学科 教授)

脳は言語に対して特異的に発達した機能を持つように、音楽に対しても音楽脳機能というものが存在すると考える研究者は多いと思います。ただ、それが単なる聴覚とどう違うのかということになると言語と同様難しい問題が山積しています。 MEGはFMRIと並んで重要な情報、特に時間分解能に優れた情報を提供してくれます。装置代も維持費も大変高額の研究機器ですが、米国などでは最近またこれを使った脳機能研究が増加しつつあり、我が国でもこの分野の一層の発展が望まれます。

11月15日(火)

荒船 龍彦(東京電機大学 理工学部 理工学科(電子・機械工学系) 准教授)

心臓は生体における血液ポンプ機能を担う重要な臓器であるが、これは電気生理メカニズムに基づいたリズミカルな心筋組織の収縮拡張運動によって機能する。この調律されたリズムが乱れ、血液を全身に送ることができなくなる疾患が不整脈であり、心臓突然死を惹起する重篤な疾病である。しかし心臓は身体の中にあり、また心筋を駆動する高速な興奮伝播現象も目に見えないため、不整脈現象を理解するには従来体外から電極で計測する心電図のみであった。
この不可視である心臓の興奮伝播現象を、二次元的に可視化する光学計測技術について紹介し、不整脈の成因である『スパイラルリエントリ』現象の解析について最新の知見を解説する。

山田 将志(オリンパス株式会社 医療第2開発本部 治療機器開発部 エネルギー機器3G チームリーダー)

内視鏡外科手術は、従来の大きくお腹を開く開腹手術に比べ、患者さんの術後の痛みが少 なく、入院期間も短いことなどにより、適用範囲が広がり手術件数が増えている。内視鏡外科手術においては、組織を切離するときに、出血を防ぐことが重要となる。これを解決 する為、エネルギーデバイスと呼ばれる機器が登場し、内視鏡外科手術の発展に大きく貢 献してきた。エネルギーデバイスは、内視鏡外科手術においてドクターの手となるため、 組織の切離の他にも多くの機能が求められる。本講義では、エネルギーデバイスの機能と特徴について説明を行う。

11月22日(火)

峰島 三千男(東京女子医科大学 臨床工学科 教授)

血液浄化療法とは、患者血液を体外循環し病因物質を除去することにより患者の病態改善を目的とした治療の総称である。不治の病といわれた慢性腎不全から患者を救命・延命し得た血液透析がその代表である。その後、自己免疫疾患等の難病患者に対するアフェレシス療法、救命救急・集中治療領域での急性血液浄化として拡大・発展した。この血液浄化療法に用いられる人工腎臓などのデバイスの体内埋込化、体表面への携帯化により、恒久的な治療を可能とする発想は以前から提唱されたが、インターフェイスである医用材料面の問題を克服できず、実現できないのが現状である。今後は、体外循環にこだわらない全く新しい発想による治療の創出が期待される。

小林 英津子(東京大学大学院 工学系研究科 精密工学専攻 准教授)

本講義では低侵襲手術支援ロボットシステムについて、これまでの研究の概要、ならびに、現在の最新の研究状況について紹介する。手術支援ロボットに関する研究は、機械工学、情報工学、そして、医学などの分野にまたがる学際的な研究分野である。通常のロボットとは異なり、外科分野におけるニーズに即したロボット開発、それにともなう、機械機構開発、情報処理機構開発が求められる。本講義では、これらを紹介すると共に、これからの低侵襲手術支援ロボットシステムの今後について講義する。

11月29日(火)

大森 正樹
(国家公務員共済組合連合会 虎の門病院 臨床工学部・KKRシミュレーション・ラボセンター 臨床工学技士/シミュレーション・ラボセンター ラボマネージャー)

国民へ質の高い安全な医療を提供するために、私たち医療界では様々な取り組みを講じています。とりわけ「教育」は重要な位置づけとなり、昨今では医療用シミュレータを用いた医療シミュレーション教育が積極的に導入されています。更に全国各地で医療シミュレーション教育実践の場「シミュレーションセンター」といわれる医療人育成施設が多数設立されています。
国家公務員共済組合連合会では、2006年4月に国家公務員共済組合連合会シミュレーション・ラボセンターを開所し、今年で10年を迎えました。本講座では、当センター10年間の実績をもとにした医療シミュレーション教育の要点と工学が教育に寄与する点について解説します。

武田 聡(東京慈恵会医科大学 救急医学講座 主任教授)

救急医療の現場は、緊急対応が求められることが多く、患者安全のためにも日頃からのトレーニングが必要である。我々はマネキンなどを使用したシミュレーション教育を積極的に導入して、患者安全のために医療者の緊急対応能力の向上を目指している。また救急医療の現場はICTの活用が期待される分野でもあり、病院内はもちろん病院外でも様々な試みが行われている。本講義ではこれらシミュレーション教育やICTの活用について、我々が行っている具体例を提示して、最新の話題をお話する予定である。

12月6日(火)

福井 康裕(東京電機大学ME会 会長)

東京電機大学では、1977年以来新しく発展してきたME(Medical Engineering:医用工学)について、公開講座を設けて、今年で第40回目となる。まず、このME講座を、まとめとして総括する。さらに、今回の主テーマである「医工連携」に関して概説する。安倍内閣の掲げる成長戦略の大きな柱として医療機器開発がある。医療機器開発は、日本が得意としてきた「ものづくり」技術を生かせる分野である。特に、次世代型医療機器の開発には、創造的な研究開発を推進することが求められ、それには医学と工学の「医工連携」が不可欠である。この課題について現状・動向・問題などについて説明する。講座を通し、将来に向かってMEの技術者が数においても、質においてもますます充実することを期待したい。

修了式

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