ナノテクノロジー・材料 ナノシリコン

ココがポイント

量子ドット「ナノシリコン」は次世代の発光素材として非常に高いポテンシャルを持っておりDDS(ドラックデリバリシステム)などへ適用することが期待されています

今、量子ドットがディスプレイ、太陽電池、バイオイメージング、バイオ計測等さまざまな分野で熱い注目を集めています。ここでは平栗健二教授、佐藤慶介助教(工学部・電気電子工学科)が取り組みを進めている量子ドットのひとつとして、「発光機能性シリコンナノ粒子」の技術を「ナノシリコン含有溶解錠剤とその製造方法(特許第4931915号)」の発明に基づきご紹介致します。従来の発光性ナノ材料は重金属元素や有害物質が含まれているので、生体環境下で使用する場合には生体への安全性が危惧されています。これに対して、本開発技術の特徴は生体に対し無毒性・無害性で、かつ、安価な発光性材料を提供するものです。

開発技術

開発した錠剤は、粒子サイズ2.5~3.5nmの直径からなるシリコンナノ粒子を塩化ナトリウム粉末に混入した錠剤で、可視領域において蛍光発光することを特徴とするナノシリコン含有溶解錠剤です。実際に作製した錠剤の蛍光発光写真を図1に示します。

我々の技術の特徴として、シリコンナノ粒子の製造方法を簡易化することで低コストな製造技術を確立していることが挙げられます。従来の製造技術には、LSIなどの半導体製造に使用されている物理気相成長法(PVD)が採用されていましたが、我々はシリコン粉末を化学反応により溶解させることで粉末サイズをナノオーダーに縮小する新規液相プロセス技術を開発しています。最近では、シリコン粉末のエッチング手法の改良を重ねることで、シリコンナノ粒子のサイズ分布、溶媒内での分散性等をより向上させる方法も確立しつつあります。

ナノシリコンの発光現象

図1に示したナノシリコン含有錠剤の発光現象は次のようにして生じています。錠剤に紫外光線を照射すると、シリコンナノ粒子がその紫外光線を吸収し、ナノ粒子内での電子-正孔の生成が生じます。生成された電子-正孔はその後、ナノ粒子表面近傍に存在する発光準位を介して再結合することで蛍光発光が得られる原理となっています。

このように、蛍光発光はシリコンナノ粒子自身で起きているため、図1のように錠剤内にナノ粒子を添加させた状態でも、図2のように溶媒内にナノ粒子を分散させた状態でも同様の蛍光発光色を示します。我々は、このシリコンナノ粒子をバイオイメージング、バイオ計測に利用させるために、生理食塩水内に分散させたナノ粒子を動物の冠動脈等に直接流動させ、生体内環境下における蛍光発光特性を調査しています。我々が開発したナノシリコン含有錠剤は、生体内の病原部位の変動やDDS(ドラッグデリバリーシステム)の生体内循環状況を診断するためのバイオイメージング計測に利用できる機能が付加されています。

図1

図2

今後の展望

本発明のシリコンナノ粒子は、粒子の大きさによってバンドギャップ幅が決まるため、大きさが一様にそろった量子ドットを用意すれ ば、スペクトルのピークの鋭い、色純度の高い蛍光発光が得られます。そのため、医療工学用途以外にも、化粧用途、真贋識別用途など多方面で活用できる可能 性を秘めています。

※量子ドット:半導体を構成する原子が数百~数千個集まった直径数ナノメートルの微粒子で、電子は数ナノメートル以下の微小な空間に閉じ込められるので、粒子サイズに特有な光吸収・発光特性を示します。

【特許情報】
●癌細胞検知・視覚用ナノシリコン蛍光素子とその製造方法(特開2006-071330)
●環境保全性ナノシリコン溶液及びナノシリコンパウダーとそれらの製造方法(特開2006-070089)
●高輝度・低駆動電圧型ナノシリコン発光素子とその製造方法(特許第4756240号)
●ナノシリコン含有溶解錠剤とその製造方法(特許第4931015号)
●ナノシリコン含有白色発光酸化ケイ素膜とその製造方法(特開2007-063378)
●発光輝度の持続性に優れたナノシリコン粒子とその製造方法(特開2007-246329)
●シリコンナノ粒子の製造方法(特願2013-044180)
●発光材料の製造方法(特願2013-180315)

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