機械学習技術を使って小さな人工知能を
つくりだす

今、世の中は、第3次人工知能ブームを迎えています。私たちのまわりでは、“AI(人工知能)”や“IoT”といったキーワードがさまざまなところで飛び交い、日常生活に大きな変化が起きています。その人工知能を語る上で欠かせない技術が「機械学習」です。驚くべき未来を実現し得る機械学習技術研究の一端をご紹介します。

前田 英作システムデザイン工学部 情報システム学科 教授 博士(工学)

1986年東京大学理学系大学院生物科学専攻科修了後、日本電信電話株式会社(略称:NTT)入社。
2013年~2017年 NTT理事、NTTコミュニケーション科学基礎研究所 所長を経て、2017年09月より東京電機大学システムデザイン工学部 情報システム工学科 教授。専門分野は人工知能、データ科学・機械学習。

さまざまな分野でAI技術を応用する

機械学習とは、与えられたデータや情報の法則性を機械が自ら導き出し特定のタスクを遂行する技術のことで、AIの要(かなめ)となる技術です。AIの実用化は急速に進んでおり、今やあらゆる産業分野で必須の技術となりました。ですから、この分野の基礎となる技術や理論を身につけておけば社会のどこにいても役に立つ人材として活躍できるはずです。

私の研究室では、機械学習に関連する幅広い研究テーマに取り組んでいます。スマートスピーカーを使った自由対話、身体動作を加えたマルチモーダルコミュニケーション、手品やスポーツの映像解析、心拍数陣痛図など生体データの解析、伊勢型紙デザインの分析、工場生産部品検査の知能化など多岐にわたっています。

上記のすべてのテーマに共通する研究・教育の目標は次の2つです。1つ目は、機械学習を中心とした基本的な汎用技術を複数経験し、その特性を学ぶこと。2つ目は、データを集め、実験を組み、データを読み解くという研究開発における一連の流れを的確にデザインするスキルを磨くこと。この二本柱を身につけ、社会で活躍できるデータサイエンティストを育てたいと思っています。

未知の世界を知ることが次代を担う技術者の素養を育む

私はいつも学生には「世界は広いのだから、できるだけ外に出て、冒険をしてきてごらん」と言っています。教室の勉強だけではなく、一人旅に出たり、精魂込めて何かに打ち込むなど、自分の知らない世界を体験し、自ら考える力を養ってほしいと願っています。そうした人間力が新しい技術の開発には必要とされているからです。

研究室の学生たちは、それぞれの興味を生かした研究で成果を出しています。2018年、ユビキタスコンピューティングの国際会議Ubicomp2018で開催された研究コンテスト「Sussex-Huawei Locomotion Challenge」では3位に入賞しました。また、同年に電子情報学会のパターン認識・メディア理解(PRMU)研究会が主催した「第22回PRMUアルゴリズムコンテスト」では最優秀賞を受賞することができました。

機械学習やパターン認識の本質を理解した上での堂々の入賞に、研究室全体で喜ぶことができました。これから学ぶみなさんにも、多いにチャレンジしてほしいと考えています。