それぞれの場所に合う最良の建築デザインを目指して

建築設計という仕事には、大きくは意匠設計・構造設計・設備設計と呼ばれる区分があり、本学の建築学科はそれぞれに対応した研究室を設けています。「建築設計研究室」は、主に意匠設計に対応し、創意=Creativityを持って新しい建築のありかたを追究しています。その場に求められるデザインとは何か、常に最良の提案を求め続ける研究室をご紹介しましょう。

日野 雅司未来科学部 建築学科 准教授

1998年 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了。同年〜2005年株式会社山本理顕設計工場スタッフ。
2007年〜2010年 横浜国立大学大学院Y-GSA 設計助手。
2008年よりSALHAUS一級建築士事務所代表。専門分野は、建築史・意匠、都市計画・建築計画。

実践を通して建築デザインを提案する

私たちの研究室では、実在する敷地を対象にデザイン提案を行ったり、まちづくりに参加したりという実践的な活動を通して、建築を追究しています。前年度は、山梨県甲州市や新潟県十日町市において、具体的な社会的課題やモノに触れながらまちづくり提案やアートイベントへの参加を行ってきました。

私は、大学の授業だけでなく、建築設計の実務において日々提案作成を行う建築家でもあることから、所属学生にも自主的にアイデアコンペに応募するよう指導しています。

実際に、「HULIC & GINZA6」をテーマに開催された第6回ヒューリック学生アイデアコンペでは、銀座という街の歴史性を読み解きつつ、今後の商業施設のあるべき姿を提案した内容が評価され、佳作を受賞。また、「学生を対象としたバイオマス発電用ペレット収蔵施設外装デザインアイデアコンテスト」では、木材倉庫のミュージアムのデザイン提案で最優秀賞を受賞し、実際に提案に基づいた設計が行われることになりました。このように、これからの建築デザインを考えるためには、実践を通して学ぶことが重要だと考えています。

「何を」デザインするのか見つめる視点を養う

主な研究対象としている木質構造の公共建築デザイン研究や、災害復興におけるパブリックスペースのデザインプロセス研究も、建築設計実務に直接役立てることができる土台となることを目的としています。

公共建築デザインの分野では、私が代表を務める株式会社SALHAUSが基本・実施設計を手掛けた「陸前高田市立高田東中学校」が、2017年度グッドデザイン金賞に選出されました。これは、東日本大震災にて被災した3つの中学校を統合した新校舎で、学校機能の充実に加え、被災した住民の「地域の居場所」になる建築としてデザインしたものです。学校づくりのプロセスでは生徒や教員、地域住民と幾度ものワークショップを開催し、様々な希望や意見を受け入れながら設計・施工を進めました。

「デザイン」というツールを使って社会へ提案していくためには、「どのように」デザインするか、というだけではなく、「何を」デザインするのか、という視点が重要になります。これまでデザインの対象だと思われていなかったものを発見すること、デザインを役立てる新しいフィールドを探すこと、常にそういった「何」に対してアンテナを立てることが求められているのです。