2021年度:第45回カリキュラム

第45回(2021年度)東京電機大学ME講座 講師・日程・題目【オンライン講座】

9月28日(火)

植野 彰規(東京電機大学 工学部 電気電子工学科 教授)

 1970年代に提案された絶縁物電極をヒントに、2003年頃から演者が取り組み発展させてきた、敷布電極センサに基づく心電図・呼吸・離着床行動・脈動の非接触・無拘束モニタリング技術について概説する。また、類似の要素技術を応用した事例として、非接触式のウェアラブル心電計や運転シート組み込み心電計、ウェアラブル筋電計や水中筋電計、枕型眼電計、非接触脈動伝播時間計、非侵襲式神経電図計などについても紹介する。時間的な余裕があれば、他の研究グループの研究動向について説明する。

鎮西 清行(国立研究開発法人 産業技術総合研究所健康医工学研究部門 副研究部門長)

 医療機器のレギュラトリーサイエンス(RS)は,医工学の研究成果を普及させる上で欠かせない薬事法はじめ関連規制に関する知識と,それのベースとなる科学的な考え方に関する新しいサイエンスである.
 レギュラトリーサイエンスの知識は,製品の製造販売承認を取るための手練手管ではない.むしろ,開発企画,その手前の基礎研究にたずさわる皆さんにこそ,必要な「ものの考え方」である.
 この講義では,医療機器などの開発から上市までの流れに沿って,法規制の概要(法規制で求められていること,医療機器の範囲,クラス分類,臨床研究と治験,治験のデザイン,代表的な安全性要求項目など)を俯瞰して基礎知識を得ると共に,最近のトピックであるプログラム医療機器やApple Watch等のウェアラブル機器によるデジタルセラピューティクスの法規制の話題について解説する。

10月5日(火)

田中 慶太(東京電機大学 理工学部 理工学科 電子工学系 教授)

近年のディジタル化の加速やCOVID-19による社会構造の大きな変化がもたらす,人の心への影響は無視できない問題である.そのため人の心の働きを解明する脳科学がさらに重要性を増すことが予想される.ここでは,脳科学の産業応用と脳計測装置の最新の動向を紹介する.特に神経細胞の興奮に伴う脳血流量の変化を画像化する手法であるfMRI,脳神経活動に伴う神経の細胞内電流を,超伝導磁束量子干渉計(SQUID)により計測する脳磁図(MEG)の研究について説明する. 最後に脳計測からわかること,脳科学の今後を展望する.

木村 剛(東京医科歯科大学 生体材料工学研究所 准教授)

生命科学と工学の融合によって新しい生体組織・器官を作製する概念である組織工学が提唱され、再生医療において必要な技術となっている。細胞、増殖因子、足場材料を組み合わせて生体組織を構築する技術である。足場材料としては生体内吸収性のスポンジや繊維性材料が用いられているが、最近では、生体組織から細胞のみを除去した細胞外マトリックスである脱細胞化生組織が良好な生体適合性を示し、欧米を中心として開発が進められている。さらに、足場材料のみを生体に移植して組織を修復するin situ組織再生など新しい概念が提案され、ますます進展している。本講座では、このような再生医療における組織工学の現在と未来について概説する。

10月12日(火)

荒船 龍彦(東京電機大学 理工学部 理工学科 電子工学系 教授)

生体を数値モデルで再現するin silico研究(生体シミュレーション研究)は、生体機能の解明にフォーカスを当てた従来の研究に留まらず、現在飛躍的に発展しその活躍の場を広げています。2013年のFDA、NIH主催のin silicoワークショップを皮切りに、米国や欧州学会が医療機器開発にin silicoを活用するガイドラインを策定し、わが国でも次世代医療機器ガイドラインに記載が盛り込まれるなど、その重要度は増しています。海外で先行するin silicoと医療機器開発・評価の最新動向を,in silicoを実際に活用した機器の具体例を交えながら解説します.

佐久間 一郎(東京大学大学院工学系研究科 医療福祉工学
開発評価研究センター 教授)

 医療機器開発は,通常の民生用工業品開発とは異なり,主な研究開発担当者である工学研究開発担当者が,ユーザとなり開発中の機器の評価をできない。また医療機器の機能は機器の機能と,医師/医療従事者の手技(使用法)の両者がそろって初めて実現されるものである。このため基礎的な研究開発段階からの医工連携が不可欠である。工学者は医学的要求を,医学者は機器機能を実現する工学的原理という,自らとは異なる分野の情報を理解しなければならない。その基礎は基本的な数学,物理学,化学,生命科学であり,科学的知識に基づく論理的な思考をすることが求められる。これはリスクマネジメントに基づく規制対応にも当てはまる。 講義では以上の観点に基づき,これまで経験した例を通じて,医工連携を進めるうえで留意すべき点を議論する。

10月19日(火)

森 武俊(東京大学 次世代知能科学研究センター 教授)

2025年に日本は団塊の世代が75歳を迎え,超高齢化率が世界一となると予想されている.高齢者が幸せWell-Being) に暮らすためには,「治す」医療から「支える」医療へのパラダイムシフトが必要となる.そこでは,地域と家庭における新しい医療体制の確立が課題となるであろう.看護は,患者・療養者の生活を全人的に支援する実践的科学であり,まさにこの「支える」医療の中核をなす領域である.工学研究者が,ヘルスケアプロフェッショナルや看護学研究者ならびに企業と協働することにより推進している技術開発について,療養者支援のための看護理工学研究例の位置づけで,その成果と課題について概説する.

中島 勧(埼玉医科大学 医学部 総合医療センター 医療安全管理学  教授)

医療の最重要な役割は病気の治療であるが、他にも重要なことがある。今は健康な人でも、家族や友人が病気になった時に、信頼できる医療機関にかかれることが保障されていなければ、安心して生活できない。医療は地域社会に住む人たちに安心感を与える役割も担っており、安心感を損ねる出来事をなくすのが、医療における安全管理の最大の役割である。
実際に治療が行われる際には、関わる全ての人が医療チームを結成し、共通の目標に向けて自らのできることを最大限行う必要がある。従来は医療チームと言えば、医師・看護師等の医療職が中心と認識され、特に医療に高度なME機器が多数関わるようになって臨床工学技士の重要性が高まってきた。しかし新たな医療機器について、現場の医療職が全て把握することは困難であり、メンテナンスや開発に当たる担当者もチームの一員という意識を持つことが望ましい状況になっている。
本講義では医療安全の基礎的知識に加えて、チームで取り組む医療安全に必要な手法をまとめたチームステップスについて紹介する。

10月26日(火)

中山 剛(国立研究機関勤務)

支援機器とは障害者・高齢者の活動・参加を支援するための機器の総称であり、福祉機器、リハビリテーション機器、補助具、又は補助機器とも称される。支援機器を有効に活用するためには、利用者の身体状況や環境等に合わせた適合という作業プロセスが重要となる。支援機器の適合のためには障害者のニーズをしっかりと把握することが最初のステップである。福祉の現場における支援機器の適合の事例を交えて障害者のニーズと支援機器を概説し、更に支援機器の定義や国際的な規格等の動向も合わせて紹介する。

井上 淳(東京電機大学 工学部 機械工学科 准教授)

福祉機器開発の現場でも、仕様策定が重要だという共通認識が形成されて久しいが、実際にはその策定に失敗することが多くある。また、臨床現場では利用者と開発者の間に、中間利用者ともいうべき医師や理学療法士・作業療法士・看護師などが介在する。そういった中間利用者が福祉機器の利用に関わる場合、単純に「効果がある」というだけではなく、中間利用者の工学的なレベル,使用する場面を想定したものづくりの重要性の必要性を強く認識する必要がある。そこで今回は、仕様策定の重要性と、現場を意識したものづくりについて解説する。

11月9日(火)

森 健策(名古屋大学 大学院情報学研究科 知能システム学専攻 教授 名古屋大学 情報基盤センターセンター長)

本講義では、人工知能(AI)技術、とりわけ機械学習(ML)技術を利用した医療支援について解説する。AIやMLの手法は、我々の社会の様々な分野で幅広く利用されるようになっており。これは医療の分野も例外ではない。AI・MLを用いることで、医用画像診断支援や手術支援など、様々な医療支援タスクを実行できるようになる。高度な利活用においては、その数理的基盤をきちんと理解することも重要である。そこで、本稿では、医用画像認識理解にフォーカスし、MLを用いた画像認識理解について数理的基礎を解説するともに、AI/MLを利用した医療機器開発など社会実装についても講義したい。

笹野 哲郎(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科循環制御内科学分野 教授)

 日本における寝たきりの最大の原因疾患は脳梗塞であり、なかでも不整脈の一種である心房細動を原因とする心原性脳梗塞は、日本の寝たきりの約5分の1を占める。心房細動は、その初期には発作性であり、かつ無症状のことも多いため発見が難しい。我々は、無症状の心房細動を早期に発見して先制治療を行うことで寝たきりを減らす研究を行っている。心電図のAI解析を用いて心房細動の発症予測を行い、ウェアラブル機器とIoTを活用して遠隔診療で診断を行うという地域医療プロジェクトについて解説する。

11月16日(火)

桑名 健太(東京電機大学 工学部 先端機械工学科 准教授)

 内視鏡下手術は,体にあけた数個の小さな穴を介して,細長い棒形状の内視鏡や手術器具を使って体内を治療する手術である.患者に対する負担が少なく,入院期間が短くなるという利点がある一方で,使用する内視鏡や手術器具の特徴から,手術中の視野が狭い,奥行き感が得られない,触った感覚が得られない,等の課題があり,医師にとっては負担の大きな手術となっている.そのため,外科医をサポートするデバイスが求められる.本講義では,演者が研究で活用している技術の1つであるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術の概要を説明し,MEMS力センサを活用した臓器の硬さ計測が可能なセンサ付鉗子システムをはじめとした手術支援デバイスの研究を紹介する.

福原 武志(理化学研究所 脳神経科学研究センター神経変性疾患連携研究チーム 研究員)

創薬標的の同定には、疾患の分子メカニズムを解き明かすことが必要と多くの科学者は考えて様々な仮説検証実験に労を費やしている。一方で創薬探索の実施には、様々な分野の知識や技術が横断的に統合された探索パイプラインを必要とするが、それは容易いことではない。いずれの場合にも、多くの選択肢から候補を選ぶ試行回数の「質と量」を要するところは共通である。
講義では、技術や装置の新規開発が拓いた学問分野の変遷から、創薬パイプラインの変貌を解説し、ごく近年の大規模情報処理を伴う新しい展開も概説する。特に注目を浴びている「抗体」について、特性や探索事例を学び、産学官連携を必要とするミッシングリンクを提示してみたい。

11月30日(火)

小林 英津子(東京大学大学院 工学系研究科 精密工学専攻 教授、東京大学工学部 精密工学科 教授)

本講義では低侵襲手術支援ロボットシステムについて、これまでの研究の概要、ならびに、現在の最新の研究状況について紹介する。手術支援ロボットに関する研究は、機械工学、情報工学、そして、医学などの分野にまたがる学際的な研究分野である。通常のロボットとは異なり、外科分野におけるニーズに即したロボット開発、それにともなう、機械機構開発、情報処理機構開発が求められる。本講義では、これらを紹介すると共に、これからの低侵襲手術支援ロボットシステムの今後について講義する。

村垣 善浩(東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 先端工学外科学分野 教授)

情報誘導手術は、外科医の経験による判断ではなく客観的な可視情報による意思決定を行う手術である。摘出率と予後との関連が示唆された悪性脳腫瘍(神経膠腫)を主対象に3種情報を基に判断する。
残存腫瘍を同定する術中MRIやナビゲーションから解剖学的情報を取得し、覚醒下手術や運動誘発電位等による機能的情報、術中迅速診断や蛍光診断から組織学的情報を取得する。20年で2000例以上の悪性脳腫瘍摘出術を施行し平均摘出率90%を達成した。
物理力やロボットで治療を行う精密誘導治療に発展させるために、現在、すべての機器をネットワークで接続したスマート治療室SCOTを臨床研究中(100例以上施行)であり、近未来型のシステムを紹介する。

12月7日

許 俊鋭(東京都健康長寿センター 心臓血管外科 センター長)

 重症心不全に対する究極的治療は心臓移植および人工心臓治療である。年間2500例以上の心臓移植が実施される米国でもドナー心不足は深刻で、植込型LVADによるDestination Therapy (DT)が長足の普及を見ている。2018年の米国INTERMACS統計では植込型LVAD登録数(2014~2017)の50%がDTである。日本でも2021年4月30日にHeartMate3がDT(Destination Therapy:長期在宅補助人工心臓治療)適用となり保険収載され東大・阪大など7施設がDT施設として認定された。
 日本の2019年の心臓移植数は84例と増加したが、COVID-19感染流行の影響を受け2020年は54例にとどまった。2020年12月末の心臓移植数は566症例で、移植待機期間は16000日以上に及ぶ。一方、カテーテル型VAD (Impella) は経皮的に植え込みが可能であり、2017年10月~2020年1月の28か月間に心原性ショックを治療対象とした国内レジストリーに1326例が登録され、30日生存率79.4%と良好な治療成績が達成されている。循環器内科医にも迅速な補助開始が可能なデバイスとして心原性ショック症例の治療成績の向上が期待される。

片桐 伸将(国立循環器病研究センター研究所 人工臓器部 特任研究員)

膜型人工肺による呼吸補助(extracorporeal membrane oxygenation : ECMO)システムは,血液に対する酸素添加・炭酸ガス除去を行う人工肺,血液の循環を行なう血液ポンプおよび血液チューブから成るシンプルな血液回路から構成されている.このシステムによる心肺補助は,急性期の重症心不全や重症呼吸不全症例の一次救命を中心に有用性が高く,近年では主要デバイスの高機能化や生体適合性の向上,管理技術の洗練によって,数日から数週間にわたって実施される様になってきた.特にコロナやインフルエンザに代表されるウィルス感染症などによる重症肺炎は長期化する場合もあり,効果が限定的で肺へのダメージも問題とされる従来の呼吸器による機械的陽圧換気に代わり,ECMOによる心肺補助への期待が高まっている.本講義では,ECMOの概要,従来製品の長期耐久性や生体適合性に関する問題,最先端のシステムに至る研究開発ついて紹介する.

12月14日(火)

宮脇 富士夫(東京電機大学 理工学部 理工学科電子工学系 教授)

遺伝子組換え動物作製の第一歩は目的とする外来DNAの細胞内への導入である。この遺伝子導入法には何種類かあり、ターゲットとなる細胞の種類や大きさ、導入DNAのサイズなどに応じて使い分けられている。本講義では、まずそれぞれの遺伝子導入法の長所・短所について概説する。次に、講義の主題であるマイクロインジェクション法の中で最もオーソドックな「前核マイクロインジェクション法」についてまず解説し、講演者が開発した「振動型マイクロインジェクション・システム」や、講演者が考案した「前核間細胞質マイクロインジェクション法」(巨大なDNA断片の導入を容易にする可能性の高い手法)についても紹介する。

修了式

※都合により変更になる場合があります

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