2023年度:第47回カリキュラム

第47回(2023年度)東京電機大学ME講座 講師・日程・題目【オンライン講座】

10月3日(火)

荒船 龍彦(東京電機大学 理工学部 理工学科電子工学系 教授)

生体を数値モデルで再現するin silico(生体数値シミュレーション)研究は、生体機能の解明と理解にフォーカスを当てた従来の研究に留まらず、現在飛躍的に発展しその活躍の場を広げています。2013年から米国や欧州学会が医療機器開発にin silicoを活用するガイドラインを策定し、わが国でも2014年の次世代医療機器ガイドラインに記載が盛り込まれるなど、その重要度は増しています。海外で先行するin silicoと医療機器開発・評価の最新動向を,in silicoを実際に活用した機器や欧州でスタンダード化しつつある評価手法の具体例を交えながら解説します。

朔 啓太(国立循環器病研究センター研究所 循環動態制御部 室長)

循環器急性期疾患や手術麻酔の現場において、医師や医療スタッフは血圧や心拍出量、肺動脈楔入圧などさまざまな循環パラメータを見ながら介入ポイントを把握し、評価や治療を行う。臓器障害が少ない状況での介入は、単純な規則やアルゴリズムで可能であるが、複雑化すると専門的かつ大量の経験が必要となる。我々は、得られた循環パラメータを用いて循環動態を可視化できるシミュレーションソフトウェアを開発している。このソフトを用いることで、循環動態をリアルタイムに再現できるだけでなく、患者個々の最適な介入方法や介入による循環動態予測を可能にしたいと考えている。本講義では、自己満足の循環動態シミュレーターに留まらず、臨床を制御する医療機器に成長するために必要なアクションを議論してみたい。

10月10日(火)

藤原 崇志(大原記念倉敷中央医療機構 臨床医学研究所臨床研究支援センター 副センター長)

IoTの普及と昨今の新型コロナ感染症の流行により、医療の形態が大きく変わりつつある。遠隔診療も電話から情報通信機器へと変化し、また情報通信機器による情報を処理する医療機器(SaMD)プログラムが登場した。従来は医療者が身体診察を行い診断につなげる行為が、SaMDにより医療者の判断を代替・支援する形となっている。耳鼻咽喉科領域では非医療機器デバイスの利用(スマートフォンによる聴力検査、耳かきを用いた遠隔鼓膜所見など)が行われ、SaMDの開発が進んでいる。本講演では、耳鼻咽喉科領域におけるIoT、SaMDの実際について紹介する。

桑名 健太(東京電機大学 工学部 先端機械工学科 准教授)

内視鏡下手術は,体にあけた数個の小さな穴を介して,細長い棒形状の内視鏡や手術器具を使って体内を治療する手術である.切開範囲が小さく,患者に対する負担が少ないという利点がある一方で,使用する内視鏡や手術器具の特徴から,手術中の視野・作業空間が狭い,奥行きを正しく知覚することが難しい,触った感覚が得られない,等,医師にとっては負担の大きな手術となっている.そのため,外科医をサポートするデバイスが求められる.本講義では,演者が研究で活用しているMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術の概要を説明し,把持対象の硬さ計測が可能なセンサ付鉗子システムをはじめとした手術支援デバイスの研究を紹介する.

10月17日(火)

宮脇 富士夫(東京電機大学 理工学部 理工学科電子工学系 教授)

遺伝子組換え動物作製の第一歩は目的とする外来DNAの細胞内への導入である。この遺伝子導入法には何種類かあり、講義の主題であるマイクロインジェクション法も含めてそれぞれの長所・短所について概説する。そして、導入後の外来DNAがゲノムに組み込まれるかどうかは言わば運任せであったのを劇的に改善したゲノム編集についても言及した上で、マイクロインジェクションの中でも最も一般的な「前核マイクロインジェクション法」について解説し、講演者が開発した「振動型マイクロインジェクション・システム」や、講演者が考案した「前核間細胞質マイクロインジェクション法」(巨大なDNA断片の導入を容易にする手法)についても紹介する。

木村 剛(東京医科歯科大学 生体材料工学研究科 准教授)

生命科学と工学の融合によって新しい生体組織・器官を作製する概念である組織工学が約30年前に提唱され、現在の再生医療において重要な技術となっている。細胞、増殖因子、足場材料を組み合わせて生体組織を構築する技術である。足場材料としては生体内吸収性のスポンジや繊維性材料が用いられているが、最近では、生体組織から細胞のみを除去した細胞外マトリックスである脱細胞化生組織が良好な生体適合性を示し、欧米を中心として開発が進められている。さらに、足場材料のみを生体に移植して組織を修復するin situ組織再生など新しい概念が提案され、ますます進展している。本講座では、このような組織工学による再生医療について概説する。

10月24日(火)

井上 淳(東京電機大学 工学部 機械工学科 准教授)

福祉機器開発の現場でも、仕様策定が重要だという共通認識が形成されて久しいが、実際にはその策定に失敗することが多くある。また、臨床現場では利用者と開発者の間に、中間利用者ともいうべき医師や理学療法士・作業療法士・看護師などが介在する。その場合、単純に「効果がある」だけではなく、中間利用者の工学的な知識,使用する場面を想定したものづくりを強く意識する必要がある。そこで今回は、仕様策定の重要性と、現場を意識したものづくりについて解説する。また、医療・福祉分野、工学分野、デザイン分野の学生が障害当事者からニーズを聞き取って福祉機器等を製作する、福祉機器開発人材の育成プログラムである、ニーズ アンド アイデアフォーラムについて紹介する。

山下 和彦(東都大学 幕張ヒューマンケア学部 臨床工学科 教授)

スマートフォンを用いたヘルステック・エイジテックが注目を集めている.その中でも歩行は糖尿病などの慢性疾患,うつ病などの精神的課題等の予防,改善につながることが期待されており,様々なアプリが開発されている.我々は,歩数に加えて,歩くための足部にフォーカスし,スマートフォンを用いた足部の骨格解析技術を開発している.加えて,足部の機能改善による疾病発症率などを明らかにしてきた.足部の評価は子どもでは骨格の発達,中高年では関節疾患や日常生活機能に関連する.本講座では,足部の計測技術の開発の成果と健康づくりを支える知見をご紹介する.

10月31日(火)

村垣 善浩(神戸大学 未来医工学研究開発センター センター長)

情報誘導手術は、外科医の経験による判断ではなく客観的な可視情報による意思決定を行う手術である。摘出率と予後との関連が示唆された悪性脳腫瘍(神経膠腫)を主対象に3種情報を基に判断する。残存腫瘍を同定する術中MRIやナビゲーションから解剖学的情報を取得し、覚醒下手術や運動誘発電位等による機能的情報、術中迅速診断や蛍光診断から組織学的情報を取得する。20年で2000例以上の悪性脳腫瘍摘出術を施行し平均摘出率90%を達成した。
物理力やロボットで治療を行う精密誘導治療に発展させるために、現在、すべての機器をネットワークで接続したスマート治療室SCOTを実用化し臨床研究を行っている。遠隔医療への応用や医療用ロボット含めて近未来型のシステムを紹介する。

小林 英津子(東京大学大学院 工学系研究科 教授)

本講義では低侵襲手術支援ロボットシステムについて、これまでの研究の概要、ならびに、現在の最新の研究状況について紹介する。手術支援ロボットに関する研究は、機械工学、情報工学、そして、医学などの分野にまたがる学際的な研究分野である。通常のロボットとは異なり、外科分野におけるニーズに即したロボット開発、それにともなう、機械機構開発、情報処理機構開発が求められる。本講義では、これらを紹介すると共に、これからの低侵襲手術支援ロボットシステムの今後について講義する。

11月7日(火)

笹野 哲郎(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 循環制御内科学分野 教授)

森 健策(名古屋大学大学院 情報学研究科知能システム学専攻 教授)

本講義では、医用画像処理分野における人工知能の基礎と応用について解説したい。人工知能技術(AI技術)、あるいは、機械学習技術(ML技術)は急速に進歩し、社会生活の様々な場面での利活用が進んでいる。医療分野、とりわけ、医用画像処理分野においても、ML技術を活用した診断支援機器の開発や臨床現場における利活用が進んでいる。そこで、本講義では、画像処理分野におけるAI技術・ML技術について基礎的な事項の解説を行い、これらの技術の本質を学ぶとともに、それを応用した医用画像診断支援機器について紹介したい。

11月14日(火)

西中 知博(国立循環器病研究センター人工臓器部 部長)

機械的循環補助法は近年急激な進歩を遂げ、必要不可欠な治療手段となっている。心肺蘇生、重篤循環不全症例に使用されるECMO(Extracorporeal membrane oxygenation)は広く普及している。呼吸補助として重症呼吸不全症例の治療においても使用されている。心肺蘇生、重篤な循環不全症例に使用されるECMOは静脈脱血、動脈送血方式で実施されるが、全身の循環を保つうえで有効がある一方で、左心室に対しては負荷増加を来すなどの課題がある。小型の軸流ポンプを有する経皮的補助人工心臓が普及しつつあり、単独またはECMOと併用され使用されている。これらの機械的循環補助法では救命し得ない重篤症例に対しては、体外設置型、及び植込み型補助人工心臓が適応される。体外設置型補助人工心臓は拍動流式が用いられてきたが、最近、連続流式補助人工心臓が開発されている。植込み型補助人工心臓は心臓移植へのブリッジ使用およびDestination Therapyとして必要不可欠な治療手段となっている。

許 俊鋭(東京都健康長寿医療センター センター長)

現状の重症心不全に対する究極的治療は心臓移植と人工心臓治療である。年間2500例以上の心臓移植が実施される米国でもドナー心不足は深刻で、植込型LVADによるDestination Therapy (DT:期在宅補助人工心臓治)が長足の普及を見ている。2018年に米国UNOSの心臓移植Allocation System が大きく変更され、2020年にはBTT症例が植込型LVAD症例の6.6%まで激減した。日本でも2021年4月30日にHeartMate3のDT適用が承認され、保険収載され、東大・阪大など7施設がDT施設として認定された。2023年2月までに49例がDT適応でLVAD治療を受けているが、60歳未満が26例(53%)含まれかなりのBTC(Bridge to Candidacy)症例がDT適応に含まれている可能性がある。
日本の2019年の心臓移植数は84例と増加したが、COVID-19感染流行の影響を受け2020・2021年は54・59例にとどまった。2022年の移植数79例に対に回復したが、2022年末には10倍以上の861人が心臓移植待機している。成人症例のStatus 1での移植待機期間は1877日で、多くの症例は5年以上のBTT期間を経てようやく移植に到達できる。

11月21日(火)

中谷 達行(岡山理科大学 フロンティア理工学研究所 教授)

我が国が直面している超高齢化社会を構築するためには,高度管理医療機器を用いた低侵襲治療が必要不可欠であり,医療用材料の生体親和性の向上が強く求められている.プラズマ化学気相堆積法などにより成膜されるダイヤモンド状炭素膜(DLC : Diamond-like Carbon)は,平滑で不活性な表面であるため,生体物質との相互作用を嫌う医療材料の生体適合化技術の一つとして高い注目を集めている.本講座では,先進のDLCコーティング技術及び,バイオミメティックスDLC創成技術の医療分野への応用について,冠動脈ステントや人工血管などを例にとり,医学・工学融合領域における最先端の実用化技術について紹介する.

大塚 明香(国立研究開発法人 情報通信研究機構 未来ICT研究所脳情報通信融合研究センター
脳機能解析研究室 研究技術員)

脳磁界計測(MEG: Magnetoencephalography)は、 脳神経細胞の電気的活動により発生する磁界を超電導センサを用いて頭皮上から非侵襲的に検出し、時空間的に可視化する脳機能イメージング法である。脳磁界信号は微弱であるため、被験者の心拍や呼吸などの生理活動に由来する磁気雑音成分は分離して除去する必要がある一方で、生理活動の指標として活用することができる。本講演では、生体磁気計測技術の概要と、当機構で進めている生体磁気モニタリングシステムの構築や、脳情報の活用を目指した研究技術開発について紹介する。

11月28日(火)

谷城 博幸(大阪歯科大学 医療イノベーション研究推進機構 事業化研究推進センター
開発支援部門 教授)

医療機器を製品として世の中に出すためには、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)に基づく、必要な規制手続きに対応する必要がある。これらの規制の手続きには、医療機器として求められる有効性・安全性に係る臨床評価(使用目的・効果を実証するためのヒトを用いた臨床試験)や、非臨床評価(物理・化学的特性や機械的特性、動物を用いた模擬試験)等が必要であり、設計・開発の段階でこれらの評価を意識して実用化までの道のりを進める必要がある。本講演を活用して、医療機器に係る薬機法規制の概要を理解し、実用化を進めるための足がかりとしていただくことを期待している。

佐久間 一郎(東京大学大学院 工学系研究科 附属医療福祉工学開発評価センター
精密工学専攻 バイオエンジニリング専攻 教授)

医療機器は大きくX線画像装置,超音波画像診断装置,心電計・脳波計などの寝台用医療機器と,電気メス,電気刺激装置などの治療用医療機器に分類される.医療行為は診断情報に基づき治療計画を立て治療を実施する過程であり,診断・治療を一体化することにより医療の品質を向上する試みがなされている.画像誘導治療システムはその典型例であるが,診断技術により得られる情報を処理し,治療に有効な情報に変換し生体への適切な介入制御を行うためには,単なる制御工学的なフィードバックに加え,生体モデルを介した予測機能が求められる.講義では生体計測解析技術と治療工学の融合に関して留意すべき論点を,研究例を示しつつ議論する.

12月5日(火)

仲上 豪二朗(東京大学 大学院医学系研究科 老年看護学/創傷看護学分野 教授)

看護学が対象とする現象を理解し、的確な介入を提案するためには、臨床をつぶさに観察することから始め、メカニズムの探索、客観的計測方法の開発、介入機器・システムの開発、臨床での評価といった、一連の円環的研究プロセスが求められる。それを実践しているのが看護理工学であり、「無いなら創る、そして広める」をスローガンにした新しい融合的研究フレームワークといえる。基礎と臨床、そして研究と実践の結びつきについて、主に褥瘡感染症に関する研究事例を通して解説する。

修了式

※都合により変更になる場合があります

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