2025年度:第49回カリキュラム

第49回(2025年度)東京電機大学ME講座 講師・日程・題目・概要

ハイブリッド形式
(1)東京電機大学の学生は所属キャンパスで受講
(2)上記以外は東京千住キャンパスで受講とオンライン(Zoomウェビナー使用予定)の選択制
【1時限目】18:00~19:15 【2時限目】19:30~20:45 
※役職は2025年8月22日現在を記載しています。なお、題目・講師は、都合により変更になる場合があります。

9月16日(火)

佐久間 一郎(東京電機大学 総合研究所 特別専任教授)

生体の解剖学的構造(位置情報)と統合された機能情報の計測、およびその分析結果に基づいて診断が行われ、治療方針の意思決定と医療介入が実施される。こうした意思決定および介入を支援するためには、生体計測技術、医用画像計測技術、計算機シミュレーション、AI(人工知能)、ロボティクス・メカトロニクスなどの多様な技術を融合した支援システムの開発が不可欠である。本講義では、講師自身の研究成果も踏まえながら、最新技術の動向とその応用について紹介・議論する。

富井 直輝(東京大学先端科学技術研究センター 情報生体工学分野 准教授)

分子レベルから臓器レベルまで、さまざまなスケール・モダリティの生体計測技術が発展する一方で、実際の人体内で生じる生理現象にはまだまだ計測が困難なものが多くあります。本講義では、心内心電図にもとづく心臓興奮イメージング技術をはじめ、AI等の数理的最適化によって実現される先端生体計測技術に関する取り組みを紹介します。

9月30日(火)

大西 謙吾(東京電機大学 理工学部理工学科 電子情報・生体医工学系 教授)

本講義では,義肢装具を中心に支援機器の研究開発について紹介する。定義上、義肢は先天性形成不全や事故や疾病にともなう切断により欠損した四肢の機能を補完するものであるが、現実には人間の手足の機能の一部しか補えない。義肢の使用は治療なのか、生活支援のなのか?義肢装具を含む支援機器・医療機器・健康機器とではどのような開発上の違いがあるのか?国・地域によって使用されている義肢に違いはあるのか?これらのことを考えながら、四肢の欠損・機能障害のある人に必要な義肢装具の開発、研究について研究事例を紹介しながら考えたい。

藤原 清香(東京大学医学部附属病院 リハビリテーション科 准教授)

先天性の上肢欠損のある子どもたちに対し、義手を活用して自らの手で世界と関わる力を獲得していくプロセスには、医学的支援と工学的技術の密接な連携が欠かせません。本講義では、運動用の義手手先具から筋電義手などの先端技術が小児リハビリテーションにどのように導入され、子どもたちの機能的自立や社会参加を支えているのかについて、現場での実践と今後の展望を交えてご紹介します。

10月7日(火)

朔 啓太(国立循環器病研究センター研究所 循環動態制御部/バイオデジタルツイン研究部 室長/特任部長)

臨床視点と単純な循環モデルを武器に医療機器開発を推進しています。
循環シミュレーターを用いた臨床用の循環動態検証ソフトウェアやバイオデジタルツインプロジェクト、自動治療システム、カテーテル開発、心不全診療連携アプリなど基盤技術とその応用・実用化についてお話できればと考えています。

望月 修一(山梨大学大学院 総合研究部 医学域 臨床研究支援講座/融合研究臨床応用推進センター 教授/センター長)

開発した医療機器を医療現場に届ける(社会実装する)ためにはどのようなことを考えなくてはいけないかについてお話しいたします。医療現場で使ってもらうためには、医療機器を製造し販売する必要があります。このために必要な医療機器の規制や臨床研究の規則等についてお話しいたします。また最近のプログラム医療機器やAIを使用した機器についてもお話しいたします。

10月14日(火)

小林 英津子(東京大学大学院工学系研究科精密工学専攻 教授)

本講義では低侵襲手術支援ロボットシステムについて、これまでの研究の概要、ならびに、現在の最新の研究状況について紹介する。手術支援ロボットに関する研究は、機械工学、情報工学、そして、医学などの分野にまたがる学際的な研究分野である。通常のロボットとは異なり、外科分野におけるニーズに即したロボット開発、それにともなう、機械機構開発、情報処理機構開発が求められる。本講義では、これらを紹介すると共に、これからの低侵襲手術支援ロボットシステムの今後について講義する。

伊藤 雅昭(国立がん研究センター東病院 大腸外科・医療機器開発推進部門 副院長/大腸外科長/医療機器開発推進部門長)

昨今外科治療の環境は大きく変化し、内視鏡手術やロボット支援手術の導入が進んできた。これらの外科治療の進展には新たな医療機器開発が深く関与しており、外科医はその主導者としての役割を果たしうる。
我々は、手術支援ロボット開発を目指したスタートアップを起業し、手術ロボットANSURⓇは薬事承認された。また、AIを利用した外科手術におけるリアルタイム支援システムの開発も進められ、SurVis™︎が薬事承認された。
工学者と外科医の継続的な協働によって初めて、優れた医療機器の開発が実現する。

10月21日(火)

田中 慶太(東京電機大学 理工学部理工学科 電子情報・生体医工学系 教授)

本講座では、生体磁気計測技術の一つである脳磁図(MEG:Magnetoencephalography)について、その計測原理と医用工学への応用について解説します。微弱な脳磁界を高感度に捉える技術をもとに、脳機能の可視化や聴覚認知・注意機能に関する研究事例を紹介し、非侵襲的な脳情報モニタリングの可能性について議論します。

大塚 明香(国立研究開発法人 情報通信研究機構 未来ICT研究所 脳情報通信融合研究センター 主任研究技術員)

脳磁計(Magnetoencephalography: MEG)を用いた生体磁気計測技術の概要と、動く生体磁気可視化法や音楽神経科学に関する応用研究をご紹介します。

10月28日(火)

笹野 哲郎(東京科学大学大学院 医歯学総合研究科 循環制御内科学分野 教授)

不整脈の治療は薬物療法と非薬物療法に分けられますが、近年はカテーテルアブレーションと植込み型デバイスに代表される非薬物療法の比重が増しており、新たなエネルギー源の登場とデバイスの進歩が不整脈治療を大きく発展させています。一方、不整脈の診断の上では、AIを用いた発作性不整脈の有病予測や、低侵襲な生体モニタリングによる発作の検出が医療およびヘルスケアのレベルで発展しています。医工学はこのどちらにも大きく貢献しています。本講義では、不整脈治療学・診断学のそれぞれについて医工学の寄与を中心にお話しします。

田口 光正(国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 高崎量子技術基盤研究所 先端機能材料研究部 次長)

本講義では、放射線(特に電子線やγ線)を利用して生体適合材料や機能性バイオデバイスを創製するための最先端技術とその応用について解説する。材料改質、表面機能化、架橋・分解反応、ナノ構造制御など、放射線によるユニークな作用を活かした先端バイオデバイス開発の原理と具体例を取り上げ、生体を模倣したデバイス創製や3次元細胞培養、診断・治療などへの応用について紹介する。

11月11日(火)

松崎 典弥(大阪大学大学院 工学研究科 応用化学専攻 教授)

動物福祉や研究開発の効率化の観点から動物実験代替技術の開発が活発に行われている。2013年3月に発効したEU指令により化粧品開発への動物実験が完全に禁止されて以来、この流れは世界的に波及し、化粧品以外にも化学物質や農薬、医薬品、医療機器、さらには食分野にも広がっている。これらの目的に応じて有用な代替技術を開発するためには、細胞を三次元的に操作する技術開発が重要となる。本講義では、生体高分子やタンパク質、機能性合成高分子を用いた細胞操作技術の基礎から三次元組織構築、Microphisiological system (MPS)への応用、さらには培養肉への展開など最新の話題を紹介する。

佐藤 康史(旭川医科大学 先進医工学研究センター 助教)

患者自身の組織でつくる次世代医療 — 組織工学が切り拓く、成長に追従する人工心臓弁の可能性
現在、臨床で使用されている医療機器や人工臓器の多くは、高分子や金属などの人工材料で構成されていますが、これらは長期使用時の生体適合性や耐久性、特に小児における成長への対応といった課題を抱えています。近年、再生医療や組織工学の進歩により、患者自身の細胞や組織を活用して生体適合性や再生能を備えた“生きた人工臓器”の実現が進んでいます。本講義では、自己組織を用いて作製される人工心臓弁の開発を例に、組織工学技術を活用した設計・製造法から、大動物モデルによる機能評価、そして将来的な臨床応用の可能性について解説します。

11月18日(火)

森 武俊(東京理科大学 先進工学部 機能デザイン工学科 教授/日本医療研究開発機構 介護テック領域 プログラムスーパーバイザ)

看護と工学の連携は、患者中心のケアをより高度化するための重要な取り組みです。看護学の観察力や臨床知見に、工学の客観的計測や設計技術を組み合わせることで、リアルタイム性が高く信頼できる支援の手法やシステムが実現します。例えば、ロボティックマットレスによる褥瘡予防や、歩行・足底圧の計測に基づく糖尿病足病変予防など、看護現場のニーズを出発点にした工学的解決の成果が出始めています。このような実践はデザイン思考的アプローチに基づき、現場の課題を共に抽出し、試作・検証を繰り返すプロセスが鍵となります。ケアの質とQOLの向上につながる新しい領域「看護理工学」の展開を実例を交えて紹介します。

仲上 豪二朗(東京大学大学院医学系研究科 老年看護学/創傷看護学分野 教授)

看護学が対象とする現象を理解し、的確な介入を提案するためには、臨床をつぶさに観察することから始め、メカニズムの探索、客観的計測方法の開発、介入機器・システムの開発、臨床での評価といった、一連の円環的研究プロセスが求められる。それを実践しているのが看護理工学であり、「無いなら創る、そして広める」をスローガンにした新しい融合的研究フレームワークといえる。基礎と臨床、そして研究と実践の結びつきについて、褥瘡管理や末梢静脈カテーテル挿入技術に関する研究事例を通して解説する。

11月25日(火)

許 俊鋭(東京都健康長寿医療センター 名誉センター長)

本邦における補助人工心臓治療と心臓移植治療のむ現状: 植込型LVADによるDestination Therpy と心臓再生医療の将来展望。

西中 知博(国立循環器病研究センター人工臓器部 部長)

12月2日(火)

植野 彰規(東京電機大学 工学部 電気電子工学科 教授)

就寝時のディジタルヘルスケア応用を視野に、演者が20年間取り組んできたシート電極式のマルチバイタル非接触センシング技術群について概説します。ヒトがベッド(布団)に臥床すると、「体表面-着衣とシーツ-電極」の三層構造が容量結合を形成します。容量結合を特殊な信号検出回路群に接続し、複数の信号処理技術と組み合わせることで、心電図や呼吸運動の計測と、体水分率や相対血圧の推定を試みています。

佐久間 一郎(東京電機大学 総合研究所 特別専任教授)

修了式、情報交換会

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