FD/SDセミナーレポート「オンライン大学におけるICT教育とデータ分析の実践事例」ビジネス・ブレークスルー大学 伊藤泰史先生

2016.12.14

教育改善推進室開催の第4回FD/SDセミナーは『ビジネス・ブレークスルー大学 事務総長 伊藤泰史先生』をお招きして<オンライン大学におけるICT教育とデータ分析の実践事例>と題して教育におけるICTの活用方法と事例をご紹介頂きました。
(2016年6月30日に開催した内容を編集したものです)

ビジネス・ブレークスルーとは

ビジネス・ブレークスルー(以後BBT)は、グローバルで活躍できるビジネスリーダーを育成するオンライン教育会社です。累積10,000時間強のマネジメントコンテンツライブラリがあり、更に年間1,000時間の新規コンテンツを開発しています。スカパー!の1チャンネルとブロードバンド配信の2つの配信形態を持っています。講師陣は教授、企業経営者、コンサルタント等、経営を学ぶ為の学校ですので、このような方々にお願いしています。BBT大学は文部科学省認可の大学です。 学部学科はグローバル経営学科とITソリューション学科、大学院では経営学経営管理専攻。学位は経営学士と経営管理修士を取得できます。 教育理念は「知的創造を礎に国際的視野と開拓者精神を持ち、先駆的指導者たらん人格を涵養し、世界社会に貢献する」ことを掲げています。キーワードとしては議論と集団IQ(集合知)を生かした学び、学生主体の学びを重要視しています。

ビジネス・ブレークスルーの強み

BBTの強みとしまして、動画コンテンツの充実とそれをサポートするシステムであるエア・キャンパスを独自開発していることです。コンテンツの制作は映像のプロが講師やアドバイザーと話し合いながら協同で作成しています。そして一流講師から机上の学問では無く、「実学」としての経営を学ぶことができます。また受講に関しては、世界中のどこからでもどんなデバイスでもアクセスが可能です。場所と時間に縛られないので、例えば東京勤務の方が突然大阪勤務になったとしても引き続き受講できます。また、中には世界中を旅しながら4年間で卒業した学生も実際にいます。このことはグローバルな視点を持つためにもとても有効であると考えています。

BBT独自オンラインプラットフォーム「AirCampus®」

20160630FD資料01

エア・キャンパスは、2002年から自社で独自開発しているシステムです。機能はLMS機能、ディスカッション、コンテンツ作成&管理、汎用フォーム等です。スマホ、タブレット、PCに対応しており、スマホならアンドロイドOSでもiOSでもダウンロードできるようになっています。 ディスカッション画面に、テストフォーム、オンライン英会話レッスン、お知らせ通知画面もスマホの場合はポップアップで見られるようになっています。本人確認は入学時に指紋登録をしてもらい、指紋認証にて出席確認ができるようになっています。

データの収集と活用

完全オンライン大学の特徴を活かしデータの集計・分析をし、大学側からの能動的支援ができる環境を整えております。どういったデータを取っているかというと、発言(書き込み)や視聴状況、受講完了率、成績や履修状況の管理などを見ており、どのデバイスをいつ使用しているかも管理しています。
・発言(書き込み)データ活用
発言は全てデータとして蓄積され、どの学生が1年間にどれだけ発言したか、どの科目が発言回数が多いのか等をモニタリングし、科目の場合には授業改善の材料としています。また時間単位、週単位でも発言回数を観察し、曜日や時間帯の特徴を把握しております。季節ごとにも発言推移を観察しており、例えばイベントやグループワークのあった月には発言回数が飛躍的に伸びていたりと、そのような分析も可能です。 また発言データに基づき、ドロップアウトの誘発時期を捉え、その時期に強化的に学生支援を行っています。 例えば、開講直後に発言数が少なければ、最初の段階でつまずいている可能性があります。この時期には、学生に対し集中的にサポート強化を行います。テクニカル相談を行ったり、メールや電話で通知を行ったり、面談を行うこともあります。また、学習に飽きてきたことによる中だるみの時期には、イベントや会社訪問など、課外活動を行って学生同士が会う機会を設けたりしながら、刺激になるような課題等を入れます。そして、次の受講を諦めてしまう閉講の時期には、振り返り講義やレベルアップの教材を提供したり、オンラインでサポートできるよう、なるべく学生を元気づけるようなことをしています。

・進捗状況のチェック
各学生の科目の進捗状況を細かく管理する教務担当がおります。一人一人の学生の発言数をカウントしていて、例えばある科目での発言回数の目安は12回と設定されていた場合、その目安に達しているかいないかをパーセンテージで示します。そしてパーセンテージと連動して画面上にお天気マークが表示され、晴れていればOK、雨だったら要注意など一目で見てわかるように管理しております。 他にも講義の視聴状況の管理をしており、視聴完了率、最終視聴日、視聴回数のカウントや未視聴のものがわかり、データを見ていくと、ある学生はこの科目が得意でこの科目が苦手であるなどが見えてきます。 また新入生の進捗状況の管理は非常に重要であり、スタートダッシュにつまずくと今後継続するのが難しくなることが多いので、開講して1か月はエア・キャンパスの操作と発言することになれるようにサポートの強化を行っています。

20160630資料02

視聴履歴データからの検証

BBTでは「Player Time Code bit(以後TC-bit)」を導入しており、これは講義再生のフライトレコーダーのようなものです。プレイヤーが再生した部分を時間軸上の位置と回数などを10秒毎に記録できます。これを見ると、どの部分が繰り返し視聴されているかをグラフ化でき、繰り返し視聴の部分がどんなところなのか、講師の話でどの部分で盛り上がり、視聴者は反応しているのかがすぐにわかります。他にも科目ごとに視聴回数が段々と減っているものがあればすぐにわかり、これは科目内容を見直さないといけないことがわかります。このようにTC-bitを導入することによって仮説検証を行うことができます。繰り返し視聴している部分は興味が惹かれているから繰り返すのか、退屈な授業で寝てしまったから繰り返しているのか等仮説を立て検証を行います。そして内容の再検討や講義の再編集などを行います。また良い例の部分はそのままデータベースとして残しプラクティス化(良い手本)していきます。

20160630FD資料03

オンラインならではの学習支援と質の向上

・オンラインゆえ蓄積される発言や受講履歴のデータを分析することで、異常値を事前に発見し問題を特定、トラブルを未然に回避することを可能にしている。
・年度ごとに蓄積されるデータを分析し、学生の行動パターン、受講パターンを様々な視点から予測することができる。その結果、計画的・能動的な支援を行うことが可能となった他、科目設計等にも役立っている。
・科目評価時に、アンケート結果だけでなく、履修状況や発言状況、修了率等の客観データも判断材料に加えることで、より客観的な評価を行うことが可能。
・1つの課題に対して、1コマ終了のチャイムを気にすることなく、オンライン上のサイバークラスルームでFactに基づいた議論を続けることによって集団IQを高めていく。

インターネットが世の中に普及し始めたのはつい最近のことです。これを教育に利用しているBBTは先駆者的位置づけにいるということもできるでしょう。インターネットを徹底的に使いこなし、世界中と結ぶことによって多様な学びの場ができ、新しい教育ができるようになるのではないか。我々はオンライン教育を分析し、学生に対しフィードバックしながらやっていきたいと考えます。そしてこのオンライン教育は今後伸びていく分野ではないかとも思っており、我々も日々努力している最中でございます。


以上が伊藤先生のお話です。BBTでは細かなデータ全てを解析し、仮説検証しながら活用されていることにとても驚きました。大学としての形態は異なっていますが、今後の教育におけるデータ活用法にもヒントが得られるようなお話でした。