令和元年度 PBL教育支援プログラム 成果報告書「プロジェクトワークショップ」

2020.04.01

開講学部 工学部/電気電子工学科
科目名 プロジェクトワークショップ
担当教員 佐藤慶介・安達雅春・植野彰規・加藤政一・腰塚正・陶山健仁・高井裕司・西方正司・原和裕・日高浩一・平栗健二・枡川重男・宮下收・吉田俊哉・藤川紗千恵

Q1 PBLを導入した意図・目的

PBL支援2年目になる本科目では、「課題解決能力」、「チームで仕事する能力」、「他分野の技術者と協業する能力」からなるエンジニアリング・デザイン能力を涵養するために、Project(Problem)-Based Learning(PBL)型教育による自立型デザイン学習を実践する。PBLの導入により学生間での討論ならびに産業界で豊富な実務経験のある専門技術者(電気電子工学分野ならびにそれ以外の分野)と意見交換させることで、①チーム(4年次に配属された研究室)としてプロジェクト課題を解決するための目標の設定、②目標を達成するための高度な課題解決戦略の立案、③教員ならびに専門技術者による目標達成度の評価を行い、エンジニアリング・デザイン能力を高めることを目的とする。

Q2 授業におけるPBLの実践方法

チームは、研究室に配属されたメンバー(10名程度)とし、事前に提示したプロジェクト課題「他分野の技術者の意見を取り入れたFAX製作の検討」について取り組ませた。
チームで取り組む内容は、FAX製作における他分野技術者からの意見に対して、①課題解決に向けた目標の設定、②目標を達成するための高度な課題解決戦略の選定、③選定した課題解決戦略に基づいたFAX装置の製作とし、最後に、製作したFAX装置に対して④教員と専門技術者による設定目標・課題解決戦略の達成度を評価した。
①と②では、チーム内の学生間による討論ならびに産業界で豊富な実務経験のある専門技術者(電気電子工学分野とそれ以外の分野)との意見交換により、目標と課題解決戦略の設定を明確化させた。2年目では、他分野技術者から得られる意見・情報の重要性について講義で説明したり、チームで取り組んだ内容を議事録に明確に記述させる指導をした。③では、与えられた時間内で効率良く作業を進めさせるために、チーム内での作業を分担化させた。④では、講義期間の中間地点と最終回において、専門技術者による中間報告会と最終報告会を実施した。中間報告会では、ポスター形式による発表会を行い、チーム内で設定した目標と課題解決戦略について議論させ、専門技術者からの適切なコメントをフィードバックさせることで目標、課題解決戦略、作業内容等の見直しを図らせた。最終報告会では、設定目標・課題解決戦略の達成度、チームで取り組んだ作業内容、製作物の紹介等を口頭形式による発表会を行い、教員ならびに専門技術者による最終評価を行った。評価者の意見は、チームメンバーにフィードバックさせ、今後必要になる知識として身につけさせた。

グループワークの様子

最終報告会の様子

Q3 授業における成績評価方法

成績評価は、チームの評価、個人の評価、教員・専門技術者(第三者)によるチームの評価を行った。

評価項目は、以下の5項目とした。
(1) 他分野の意見に対して、複数の課題解決戦略を考案し、具体的に提示できたか
(2) 考案した複数の課題解決戦略の中から制約条件などを考慮して論理的な議論に基づき1つを選定したか
(3) 選定した課題解決戦略に沿って、グループ内のメンバーと協力して計画立案と課題解決のための具体的な作業を遂行したか
(4) 選定した課題解決戦略が課題解決に寄与したかどうかをグループ内のメンバーと協力して評価したか
(5) 実施過程と結果をグループ内のメンバーと協力して、資料にまとめたり、第三者に分かりやすく説明できたか

以上の評価項目に対して、以下の評価を行った。
1. チームの評価:全評価の40%
・ファシリテータ(研究室の指導教員)により、評価項目(1)~(4)を評価した。評価には、グループワークで毎回作成した議事録・活動記録、計画表 (作業スケジュール)の内容を用いた。
【各項目を10点とし、10点×4項目=40点満点】

2. 個人の評価:全評価の50%
・チーム内の個々の学生が他メンバーの貢献度を評価項目(1)~(5)に対して評価した。
・ファシリテータ(研究室の指導教員)により、チーム内の個々の学生の貢献度を評価項目(1)~(5)に対して評価した。
【各項目を10点とし、10点×5項目=50点満点】

3. 教員(他研究室の教員)・専門技術者(第三者)によるチーム評価:全評価の10%
・教員により、チームが取り組んだ内容に関する達成度を評価項目(5)に対して評価した。
・専門技術者により、チームが取り組んだ内容に関する達成度を評価項目(5)に対して評価した。
【教員を5点、専門技術者(東京電機大学技術士会)を5点とし、5点×2=10点満点】

Q4 学習成果の可視化の取組み

2年目においても、授業の初回と14回で、①「課題解決能力」、②「他分野の技術者と協業する能力」、③「チームで仕事する能力」に対して、どの程度身につけることができたか、どのようなことが身についたかを問うアンケートを実施した。
①に対しては、初回のアンケートで「身につけられない」との回答が20%近くあったが、14回目のアンケートには2%程度まで減少が見られた。②に対しては、初回のアンケートで「身につけられない」との回答が30%近くあったが、14回目のアンケートには6%程度まで減少が見られた。③に対しては、初回のアンケートで「身につけられない」との回答が10%近くあったが、14回目のアンケートには2%弱まで減少が見られた。また、「新しいことへの挑戦にやりがいを感じた」、「課題解決策を考える楽しさや課題をクリアしたときの達成感を実感できた」、「課題解決方法について他分野の人、技術士会の方から意見をもらうことでより多くの課題について解決することができ、他分野技術者の意見の重要さを認識できた」、「電気電子分野以外に他分野のことにも挑戦したことで様々なことに対応できる能力が身に付いた」、「過去の議事録からアイデア等を確認することがあり、議事録の重要性を理解した」、「作業が特定の人に偏ることがあり、作業内容と情報の共有化が重要であると感じた」等多くの学びを感じている学生が多数いた。
以上のアンケート結果より、本科目の学習効果を可視化することができた。2年目の実施では、初年度よりもPBLによる実践的な学習として良い効果がもたらされている結果となった。

Q5 PBLを発展させるための課題

2年目においてもPBLによる学習によりエンジニアリング・デザイン能力が身についたと感じている学生が多く見られた。本科目は、1年次に個々の学生に対して実施した内容(FAX製作)を4年次でチームとして実施させている。そのため、プロジェクト課題の理解度が高いことで高度な課題解決戦略の立案ができ、多くの達成感を得られる状況にある。
今後は、「テーマの選定」として、1年目同様、FAX以外に実社会の問題を取り入れることで、より課題解決に至る過程・方法について実践を通じて学べる環境にすることや低学年次の経験を高学年次で活かせるテーマを検討する必要がある。また、「個々の学生の学習意欲」として、チーム内でできる学生が全てを実施し、周りの学生が孤立する様子が見られたり、難題への取り組みをあきらめる傾向が見られたため、学生の学習意欲を高める手法の検討が必要である。

Q6 授業の概要と進め方

第1回 合同ガイダンス、KJ法に関する講義
第2回 非常勤教員による合同講義:FAX製作におけるプロダクトデザイン~異分野の技術者の取り組みについて~
第3回 グループワーク:他分野の意見調査、取り組む技術課題の決定、制約条件の洗い出し・整理・確認、複数の課題解決戦略のアイデア出し等
第4回 グループワーク:他分野の意見調査、新規課題解決戦略の追加、提案された課題解決戦略の整理、課題解決戦略の選択のための議論、制約条件の再確認
第5回 グループワーク:課題解決戦略の決定とその理由の確認、役割分担や計画表(作業スケジュール)の議論、第6回で発表する資料(ポスター等)の作成
第6回 ポスター発表による中間報告会(専門技術者との意見交換): 他分野技術者と方向性(取り組む課題と課題を解決するために選択した課題解決戦略)の意見交換、役割分担や計画表(作業スケジュール)の決定
第7回 グループワーク:選択した課題解決戦略に沿った課題解決のための具体的作業・評価・報告・計画修正など
第8回 グループワーク:選択した課題解決戦略に沿った課題解決のための具体的作業・評価・報告・計画修正など
第9回 グループワーク:選択した課題解決戦略に沿った課題解決のための具体的作業・評価・報告・計画修正など
第10回 グループワーク:選択した課題解決戦略に沿った課題解決のための具体的作業・評価・報告・計画修正など
第11回 グループワーク:選択した課題解決戦略に沿った課題解決のための具体的作業・評価・報告・計画修正など
第12回 グループワーク:最終報告会(口頭発表)で使用する資料の作成
第13回 口頭発表による最終報告会:第三者評価(教員)による評価
第14回 口頭発表による最終報告会:専門技術者による評価


〇PBLを主体とした教育への取組みに対する支援(PBL教育支援プログラム学内公募)

東京電機大学教育改善推進室では、平成23年度から「学生が主体となって学ぶ」形式を取り入れた、いわゆる「PBL(Problem-Based Learning又はProject-Based Learning)」による教育の開発・運営を「PBL教育支援プログラム」として支援し推進しています。
PBL教育支援プログラムは、これからPBLを取り入れていこうと考えている教員やすでに実践しているPBLをさらに工夫しようと考えている科目を対象に支援を行い、その実践と成果を学内の関係者と共有し、学生の学びを主体とした教育の推進を図ることを目的としています。