令和3年度 PBL教育支援プログラム 成果報告「英語ⅠA」

2022.04.01

開講学部 理工学部/共通教育
科目名 英語ⅠA
担当教員 【理工学部/共通教育群】
河上 睦

Q1 PBLを導入した意図・目的

本授業にPBLを導入した意図・目的は、以下の2つである。
(1)1、2年次の必修英語科目で行うプロジェクト活動を通して英語の4技能(読む、書く、聞く、話す)をバランスよく使う機会を提供し、3年次以降に直面する専科と関連した英語学習(English for Specific Purposes)の基礎を築くこと
本理工学部の学生の多くが入試のために英語の語彙や文法を暗記しているが、実際にそれらを使用する機会をほとんど持ったことがなく、英語でのコミュニケーションに困難さを覚えている。使える英語力を育成するためには、理解可能なインプット・アウトプット・インタラクションの機会が重要であることが第二言語習得の先行研究によって示されている。これまで申請者が担当する必修英語の授業においては、多読(習熟度レベルに合った多くのインプット)やタスク活動(アウトプットとインタラクションの機会)を通して、タスクの目的を達成するために自由に言語形式を選びながら、自分が意図する事柄を伝える機会を作ってきた。しかし、学生にとって、より意味のある場面で英語を使う動機づけを高め、やる気を継続させるためには、1時間で完結するタスク活動だけでなく、カリキュラム中に組み込まれた長期のプロジェクトが必要である。
(2)コミュニケーション力の向上を目指すこと
グループワークやペアワークを効果的に行うことは、研究者、技術者として大変重要である。しかし、グループ活動の経験不足から、聞き上手、話し上手な学生は多くない。授業での議論や、協同的な学習の機会を通して一人ひとりがグループのメンバーとしてどのような役割を担うべきか、また円滑なコミュニケーションのためにはどのような言語的・非言語的アプローチをすればよいか、意思疎通のコツを学ぶ支援が必要である。

Q2 授業におけるPBLの実践方法

授業はハイフレックス形式で、学生は半数登校だったため、グループ分けは奇数と偶数を区別せず、学生全員がzoomを通して授業に参加した。プロジェクトのゴールは、グループごとに新製品を企画し発表するもので、次の5段階で構成した。①市場調査、②アイディア探究・スクリーニング、③商品コンセプト開発、④新商品の広告作成と発表・フィードバック。

プロジェクトの中で、教科書と関連づけた文法・語句を使う機会を作り、実用的な英語を学習できるような環境を提供した。グループ学習の取り組みを可視化するために、学生は、WebClass上で配布した2種類の課題(a.各段階で課される課題、b.グループワークの振り返り)を提出した。アルバイトの学生には、学生が提出したレポートや動画ファイルを整理し、毎週提出される学習カルテのコメントなど、評価が円滑に行えるように補助してもらった。最終的な発表の評価は、内容の興味深さ、パワーポイントの資料の内容や見栄え、オーディエンスを意識して効果的に伝えることができるかどうかに基づいた。学生が提案したアイディアの例としては、シニアカートとショッピングカートを組み合わせた商品や、よい香りのする目覚まし、ドローンタクシーなど様々なジャンルの商品が提案された。学生はプレゼンテーションとビデオ録画の練習を兼ねた発表を授業中に数回行い、だんだんと聞き手を意識した発表ができるようになっていった。また、プロジェクトと並行して、自分のレベルにあった英語を自分のペースで読み、その内容を口頭・作文によってクラスメイトと共有する機会として、オンライン多読を導入した。最も多く読んだ学生は50冊近く読破した。

アイデア例1

アイデア例2

アイデア例3

Q3 授業における成績評価方法

授業の成績は、英語科目の統一評価の割合に基づいて、授業点50点+期末試験20点+統一試験30点で評価した。授業点50点のうち、プロジェクト課題は20点、その他小テストや多読の読破数などが30点だった。プロジェクト課題20点の評価の内訳は以下のとおり。
1. 毎回の授業で作成するレポート課題:12点
2. 中間プレゼンテーション (商品の概要を1分間でまとめてスピーチする課題):8点
期末試験20点は、プロジェクト課題の発表と原稿で評価を行った。

Q4 学習成果の可視化の取組み

WebClassの学習カルテ機能用い、毎回の課題に対する出来栄えや感想を書き込むように指示し、それに対し、教員と大学院生アルバイトがフィードバックをした。よくできたことや課題についてコメントを記し、ホリスティクな評価アプローチをとった。
また、PBL実施前後に参加学生にアンケートをとり、プロジェクトと英語単語や表現の知識について感想を尋ねた。プロジェクトの感想(自由記述)を質的データ分析支援ソフトNVivoを用いてコーディングし、頻出語を可視化したところ、次のようなキーワードが現れた。
・英語力/コミュニケーション能力の向上
・楽しい/良い経験
・熱中/集中/達成感
・チームワーク/協力
・将来のビジョン高揚
・予想を上回る経験
また、語彙や表現知識については、PBL前よりも後の方が少しながら知識が増えたと感じていることが示された。

Q5 PBLを発展させるための課題

スキルマップを学生とともに作成し、個々人のレベルにあった目標を立てさせてからプロジェクトを始めることで、スキルの向上を個人・グループ・教員で確認でき、適切な指導やモチベーションの向上に役立つと考える。そのような個の成長を支援する教育には、やはり人手が必要となるであろう。教養科目はたいてい1名の教員が35名のクラスをいくつも担当するので、TAの導入はよい解決策になると考える。

Q6 授業の概要と進め方


〇PBLを主体とした教育への取組みに対する支援(PBL教育支援プログラム学内公募)

東京電機大学教育改善推進室では、平成23年度から「学生が主体となって学ぶ」形式を取り入れた、いわゆる「PBL(Problem-Based Learning又はProject-Based Learning)」による教育の開発・運営を「PBL教育支援プログラム」として支援し推進しています。
PBL教育支援プログラムは、これからPBLを取り入れていこうと考えている教員やすでに実践しているPBLをさらに工夫しようと考えている科目を対象に支援を行い、その実践と成果を学内の関係者と共有し、学生の学びを主体とした教育の推進を図ることを目的としています。