令和4年度 PBL教育支援プログラム 成果報告「環境生命工学ゼミⅠ」

2023.04.01

開講学部 理工学部/生命科学系
科目名 環境生命工学ゼミⅠ
担当教員 【理工学部/生命科学系】
安部 智子・武政 誠・椎葉 究・栗山 昭・松永 直樹・半田 明弘

Q1 PBLを導入した意図・目的

自立した発想のもとに生命科学分野の解くべき課題を見つけ出す能力、専門知識と技術を活用してその課題を解決するための実践力およびコミュニケーション能力を養うため、生命科学系環境生命工学コースでは3年生のゼミ科目においてミニ植物工場を用いた栽培実習およびプレゼンテーション実習を導入した。学生は、栽培の結果(収量)をもとに次の栽培条件(主に光)を検討して設定し、栽培を繰り返して収量を確認する。収量だけではなく、商品としての見た目や、電力など栽培にかかるコスト等も検討させることにより、食品製造についての実践力を養う。モノづくりの楽しさを体感するとともに、筋書きが用意されていない実験を進めることの難しさを通して計画段階の重要性や、具体的な問題解決法を学ぶことを目的とする。また、栽培条件の検討においては、栽培結果を参考にするだけではなく、文献調査の実習も並行して行い、自身で探した文献等も参考にさせる。その過程で自分が必要とする正確な情報を得る方法を学ぶことを目的とする。実習結果の発表会を行うことでプレゼンテーション能力が養われるとともに、お互いに知識を深めることができる。グループワークを主体とすることから、学生の協調性やコミュニケーション能力の向上も期待される。

Q2 授業におけるPBLの実践方法

【テーマ1:文献検索】
自分が必要とする正確な情報(例えば植物工場の現状や、植物成長に関する情報)を得る方法を見直すとともに、情報収集の重要性や情報倫理について確認した。

【テーマ2:文章の書き方】
自分の書いた文章について、長さ、接続、構成は適切か、格が変わっていないか、正しいか、などの確認を行なって自分の文章を見直す機会を設けた。

【テーマ3:プレゼンテーション】
自身が興味をもった生命科学系のテーマや就職を希望する業界について、2人1組のグループで調査し、プレゼンテーションを行なった。調査内容については、随時グループ間で議論を行い進め、発表はわかりやすさが重視された。

【テーマ4:植物工場】
研究用の植物栽培ポットの上部をくり抜き4色のLEDを設置したミニ植物工場を人数分用意した。2人1グループとし、それぞれグループごとに植物に照射する光照射条件を検討した。照射する光の色と照射の時間を1回の栽培で2パターン設定した。収穫量を上げるということに拘らず、光の色と照射の間隔で、栽培にどのような違いが得られるか、それぞれのグループで自由に目的を定めて取り組んだ。光制御や、タイムラプス動画の撮影制御にはRaspberry Pi 4 を用いた。植物は今回はカイワレに統一し、発芽後に4日間、それぞれ検討した照射パターンでLEDの光を照射した。タイムラプス動画は収穫が終わると同時にBOXで全員に共有し、成長段階の様子も参考にできるようにした。実習に先立ち、植物工場に関して調査するグループワークを設けた。文献などで実際の植物工場の環境条件(光、水、温度)や実際に動いている植物工場のメリットデメリットなどを調査し、調査内容についてグループ内で議論し、植物工場実習の前段階とした。実習後に、調査結果、実習結果をまとめた最終プレゼンを行なった。

カイワレの成長記録(タイムラプス動画より抜粋)

まとめの発表会スライド抜粋

Q3 授業における成績評価方法

・WebClassにレポートあるいは課題を提出(3回)→個人評価
・プレゼンテーション(3回)→グループ評価
・授業中のグループワークに対する姿勢、実習の結果→個人評価
以上の成績を総合して成績評価を行った。

Q4 学習成果の可視化への取組み

課題の取り組み方と学習内容について、それぞれ身についた実感度と理解度を授業後のアンケートにより可視化した。

【アンケート内容】
① 課題の取り組み方について(よく身に付いた・まあまあ身に付いた・変わらない で評価)
 ・個人で課題を立てること
 ・個人で課題の解決方法を探ること
 ・メンバーに対して個人で立てた課題とその解決方法を説明する
 ・チームで協業して選定した課題解決に取り組む
 ・課題点に対して調査に基づいて改善案を提示する
 ・文献検索するためのキーワードの選び方
 ・必要な文献を探し出す方法について
 ・新規性、独自性のあるプレゼン
 ・聞いている人の関心を得るプレゼン方法
 ・他人のプレゼンに対する的確な質問

② 学習内容(知識が深まった・まあまあ知識が深まった・変わらない で評価)
 ・作物(カイワレ)の育成方法について
 ・植物の成長に対する光の影響について
 ・植物工場という、生命系の科学技術を基に実用化が始まっている最先端技術におけるメリット
 ・植物工場という、生命系の科学技術を基に実用化が始まっている最先端技術の課題点

Q5 PBLを発展させるための課題

自由記述アンケートでは、課題を自身で考えて設定することにかなり苦労した、という意見も多かったが、多くの学生はこれまでにない形式の講義で新鮮さを感じたようであった。全体的に全てのテーマで、大変だったけど役にたった、という感想であった。しかし、課題の難易度が高く、理解が追いつかなかった学生が少数だが見られた。また、発表会での質問について返答できず、消化不良になってしまったケースがいくつか見られた。テーマ立案の過程でそれぞれの課題を明確化させるサポートを行う、質問について回答できなかった場合はレポートを提出させるなど、理解を高めるように検討したい。
興味や意欲の高い学生には、温度、湿度、CO2センサーなど、各自アクセサリーを追加できるオプションなども学生が検討できるようにしたり、Raspberry Pi 4プログラミングも学生ができるようにしたりなど、次年度以降は検討していきたい。

Q6 授業の概要と進め方

【到達目標】
 ・植物工場:植物生理を理解し、制御のための指針を自分で立てることができる。自ら計画を立て、その実験を実際に行い、結果を得る。結果を考察して次の実験へと改良を重ねる方法を身につける。
 ・プレゼンテーション実習:発表者は各テーマに関して調査し、資料をまとめ、分かり易いプレゼンテーションができる。聴講者は、発表内容を理解する。
 ・論文検索実習:キーワードをもとに自分の調べたい正しい文献を探し出すことができる。

【学習内容】
第1回  文献検索講座1
第2回  文献検索講座2
第3回  文章の書き方講座
第4回  プレゼンテーション1
第5回  プレゼンテーション2
第6回  プレゼンテーション3
第7回  プレゼンテーション4
第8回  植物工場グループワーク1
第9回  植物工場グループワーク2
第10回 植物工場実習1
第11回 植物工場実習2
第12回 植物工場実習3
第13回 植物工場実習4
第14回 総合発表会


〇PBLを主体とした教育への取組みに対する支援(PBL教育支援プログラム学内公募)

東京電機大学教育改善推進室では、平成23年度から「学生が主体となって学ぶ」形式を取り入れた、いわゆる「PBL(Problem-Based Learning又はProject-Based Learning)」による教育の開発・運営を「PBL教育支援プログラム」として支援し推進しています。
PBL教育支援プログラムは、これからPBLを取り入れていこうと考えている教員やすでに実践しているPBLをさらに工夫しようと考えている科目を対象に支援を行い、その実践と成果を学内の関係者と共有し、学生の学びを主体とした教育の推進を図ることを目的としています。