令和6年度 PBL教育支援プログラム 成果報告「総合英語Ⅱ」

2025.04.01

開講学部 工学部/電気電子工学科・電子システム工学科・応用化学科
科目名 総合英語Ⅱ
担当教員 【工学部/英語系列】
原田 依子
【未来科学部/英語系列】
櫻井 拓也

Q1 PBLを導入した意図・目的

 本学の学生が卒業までに習得すべき英語力として、英語の文献を正確に読解する力と、その内容を分かりやすく伝達するコミュニケーション能力が挙げられる。実際、英語の問題を解くことはできても、それを実際の場面で使いこなすことができない学生は多く、知識をどのように技能へと結びつけるかは、大きな課題となってきた。本学の英語の初年次教育は、座学中心の授業で基礎力を養い、その後、2年次以降に発展的な科目へ進むカリキュラムとなっている。しかし、英語が既修科目あることを考えると、早い段階から実践中心の環境に学生を置くことで、どのような効果が得られるのかを検証する意義は大きい。さらに、学生自身が主体的に考えながら英語を実際に使用することで、学習への動機づけがどの程度高まるのかを明らかにするため、今回のPBLの枠組みを導入することとした。

Q2 授業におけるPBLの実践方法

 PBLを導入した「総合英語Ⅱ」は「総合英語Ⅰ」の後期科目にあたる。前期で文法知識を整理し、後期はその知識を活用してプレゼンテーションを行うことで、知識と技能を結びつけやすくすることを目的とした。
 プレゼンテーションのテーマは、機械のシステムに関するもので、教員が選んだ「冷蔵庫」「電子レンジ」「ドローン」などのトピックの中から、学生がWebClass上で興味のあるものを選び、1グループ5~6人になるようにグループ分けを行った。学期を通して、学生はまず英語の資料を読み解き、日本語で正確にプレゼンテーションを行った後、今度は英語で分かりやすくプレゼンテーションをするという流れで授業を進め、各授業では、教員は毎回の学習目標やポイントの説明のみを行い、具体的な進め方は学生自身が考え、実践する形式をとった。
 使用した資料は、ネイティブスピーカー向けに書かれた技術解説の洋書を用いた。そのため、専門的な単語や表現が多く、教材用の英語ではないため難易度は若干高かったが、何度も読み返しながら理解しつつ、度々立ち戻って確認することを繰り返すように指示した。また、理解が難しい場合でも、持っている知識を活用して意味を推測するよう促した。最初は難しさを感じる学生が多かったが、グループで協力しながら取り組むことで責任感や連帯感が生まれ、最後まで粘り強く取り組む姿勢が見られるようになった。また、実際にネイティブスピーカーが読む文献を読めたことで、達成感を得た学生も多かった。 
 プレゼンテーションでは「分かりやすさ」を最優先とし、特にスライド作成では視覚的な工夫をするよう指示した。そのため、描画ソフトを活用し、言語情報を視覚的に表現する試行錯誤を重ねながら、資料の内容を正確に図示できているか、何度も読み返しつつ確認する作業を丁寧に行った。この英文を読み直し理解を深める過程は、プレゼンテーションの原稿を作成する際にも、役立ったようである。また、描画ソフトは英語の説明書のみが付いたものを使用し、学生自身が単語を調べながら操作を学ぶことで、英語学習にもつなげた。加えて、聞き手として発表者が話しやすい雰囲気を作るための協力の仕方についても、学生同士で話し合う機会を設けた。
 学習の進め方やペースには個人差があるため、最初はグループ内で作業のペースを調整する必要があり、自分のペースで進められないことにストレスを感じる学生もいた。しかし、時間が経つにつれて、グループ内で自然と「教え合い」が生まれ、学生が主体的に作業に取り組む姿勢が見られるようになった。

Q3 授業における成績評価方法

 日本語でのプレゼンテーション、英語でのプレゼンテーション、グループ作業での貢献度、プレゼンテーションにおける質疑応答、学習ポートフォリオの内容により成績評価を行った。
 プレゼンテーションの準備と並行して、学生のパフォーマンスを質的に評価するために、ポートフォリオを作成し、ルーブリックをもとに学生自身の自己評価を記録してもらった。ここでの記述を通して、課題にどれだけ主体的に向き合っていたかを評価し、学生の自己評価と教員によるプレゼンテーションの評価、TOEICスコアとの相関を検証したところ、概ね自己評価の高い学生が教員評価、TOEICスコアも高い傾向がみられた。プレゼンテーション評価は、低く自己評価したグループが最も高いスコアになったが、これは、オーディエンスを意識して、説明できた点において、思い切ったプレゼンテーションができたためと考えている。

Q4 学習成果の可視化への取組み

ポートフォリオを作成し、目標とする技能に対して、どの程度できるようになったかを1~5で自己評価してもらうことで、自らの学習振り返り、学習の履歴を記録できるようにした。ポートフォリオには、新出単語を書くスペースを設け、単語を調べて終わりにするのではなく、調べた単語を例文とともにポートフォリオに書き留めてもらうことで、意味と使用の仕方が身につくように努めた。同時に、書き溜めた量により学習の手応えを感じられるようにした。毎回のプレゼンテーションで気づいた点もポートフォリオに記録してもらった。

Q5 PBLを発展させるための課題

全体のオーガナイズに加え、各グループの進捗のチェック、アドバイスなど、時間的制約から、教員一人ではきめ細やかに対応することが難しい場面もあったため、通常の科目とは別に、プロジェクト科目として位置付けても良いのではないかと思った。

Q6 授業の概要と進め方

1回目:ガイダンス、グループ分け、Ice Breaking
2~4回目:資料の理解(専門分野内容の頻出表現、語彙、文法構造、構文などの確認)
5,6回目:日本語プレゼンテーションの準備
7,8回目:日本語プレゼンテーション(正確さを主眼に評価)
9,10回目:スライド、原稿を英訳(英語で発信するにあたっての「見せ方」の工夫を検討)
11回目:リハーサル(各グループからのコメントをもらう)
12回目:リハーサルを踏まえた修正(専門的な内容をわかりやすく、適切に伝える説明・解説の推敲・練習)
13,14回目:英語プレゼンテーション(分かりやすさを評価)


〇PBLを主体とした教育への取組みに対する支援(PBL教育支援プログラム学内公募)

東京電機大学教育開発推進室では、平成23年度から「学生が主体となって学ぶ」形式を取り入れた、いわゆる「PBL(Problem-Based Learning又はProject-Based Learning)」による教育の開発・運営を「PBL教育支援プログラム」として支援し推進しています。
PBL教育支援プログラムは、これからPBLを取り入れていこうと考えている教員やすでに実践しているPBLをさらに工夫しようと考えている科目を対象に支援を行い、その実践と成果を学内の関係者と共有し、学生の学びを主体とした教育の推進を図ることを目的としています。