大学院 未来の扉を開く高度研究

東京電機大学総合研究所では、埼玉鳩山キャンパスに 「共同利用施設」を有し、高度最先端研究を行うことを可能にした研究環境を整備しています。

全学的な研究機関として1981年に設立された総合研究所は、東京電機大学における教員の研究活動を積極的に展開・支援しています。大学本来の使命である知の創造と学問の創成に主眼をおき、1.プロジェクト研究の推進 2.若手研究者の育成 3.各種研究費の審査・配分を通して研究の推進と社会への貢献に努めています。研究部門は、社会的課題対応型3部門「エネルギー・環境研究部門」、「生命・医工学研究部門」、「情報研究部門」、そのための技術開発につながる「基盤工学研究部門」、知識を重視する「基礎科学研究部門」からなる5部門制です。

埼玉共同利用施設

埼玉共同利用施設では、試作系・分析系・生物系の各種実験室を整備しており、登録制により学部学科を問わず研究・実験を行うことが可能です。学部学科、専門分野の異なる研究者・学生が同一の実験室等を使用することにより、交流を深め、研究を活性化させることを目指しています。

分析系実験室

分析系実験室
・化学分析室(X線回折装置、光電子分光装置、オージェ電子分光装置など)
・光学分析室(走査型電子顕微鏡、各種分光装置、光度計など)

生物系実験室

生物系実験室
・細胞工学実験室(細胞培養設備、共焦点顕微鏡、フローサイトメータなど)
・組換えDNA実験室(個別換気型動物飼養室、P2レベル実験に対応する設備)
・動物用手術室
・微細加工室(スパッタ装置、マスクアライナーなど)

試作系実験室

試作系実験室
・試作加工室(マシニングセンタ、NC旋盤など)
・精密加工室(3Dプリンタなど)

東京千住キャンパスに研究成果を反映し、数々の賞を受賞

最新の技術が随所に反映されている東京千住キャンパスは、最新の省エネルギーや防災技術など研究のフィールド。
平成25年〜27年に「地球温暖化防止活動環境大臣賞」、「第5回サステナブル建築賞 国土交通大臣賞」他5つの大賞を受賞しました。

振動・制御研究室 最先端の免震・制振構造を採用

藤田 聡工学研究科 機械工学専攻 教授
藤田 聡

私は振動工学が専門で、1980年代のはじめから免震構造の研究に取り組んできました。いまでは非常にポピュラーになった免震構造も当時はまだ存在しておらず、東大での我々の研究が日本では先駆けだったといえます。東京千住キャンパスの設計にあたっては、設計会社と一緒に建物に最も適した免震・制振システムを検討しました。ボーリングで地盤調査を詳細に行った結果、敷地内でも場所により特性に差異があることが判明。建物の高さや大きさによっても振動特性が異なりますので、検討の結果、1号館は免震構造、2号館から4号館は制振構造を採用することになりました。こうした防災に係る研究の成果は万一巨大地震が発生した際に数万人、数十万人の命を救うことができるかもしれません。そういう部分にやりがいと緊張感を感じて日々研究に取り組んでいます。

振動・制御研究室

再生可能エネルギーの影響評価や地域に最適な電力供給のあり方を研究

加藤 政一工学研究科 電気電子工学専攻 教授
加藤 政一

エネルギー環境システム研究室では、エネルギーシステムの計画や運用・制御、および環境評価を主な研究テーマとしています。なかでも現在力を入れて取り組んでいるのが、再生可能エネルギーの影響評価とその対策です。太陽光発電や風力発電などが、これからより広く社会に入ってきた時にどういう影響があるのか、問題があるとしたら、どういう対策を講じれば導入を推進することができるのか、客観的な視点で研究を行っています。
もう一つのテーマが、スマートコミュニティです。これは、電気だけでなく、熱エネルギーや交通インフラなどを含めて、地域の最適設計を推進しようというものです。普段からコストを最小に設計して、より効率のよいエネルギー供給を図ることが狙いですが、その中で着目しているのがゴミ発電です。ゴミ焼却の廃熱を発電に利用するわけですが、万一の大災害で電力供給がストップした際でも、清掃工場を核にして地域に電力が供給できるような街づくりができないかと考えています。
技術そのものは決して新しいものではありませんが、利用法などをさまざまな角度から検証することで、新しい視野が広がることを目指しています。

エネルギー環境システム研究室東京電機大学では2006年から千葉ニュータウンキャンパスに風力発電システムを設置。東京千住キャンパスの屋上には、太陽光パネルを設置して太陽光発電を行っており、再生可能エネルギーの影響評価などの有効な研究材料となっています。

環境が人を助けるために

山田 あすか未来科学研究科 建築学専攻 准教授
山田 あすか

「建築計画」と「環境行動」が、この研究室の専門分野です。私は以前から、医療や福祉、教育の施設を専門にしていますが、「建築計画」では、そういった建築物の実施設計の前段階の計画、その建物の利用者像や活動の想定や、建物がどのようにできていれば利用者にとって使いやすく、安全で快適か、といったことを研究し、提案します。一方、「環境行動」では、人間と環境の関係そのものに着目し、ある環境に置かれた際に人々がどのような心理をもち、どのような行動をとるのか、ということを研究します。
研究対象は、高齢者施設や障碍者施設、病院、学校などですが、そこで大事にしているのは、「人を助ける環境のあり方」という視点です。環境から影響を受けやすい人たちを、環境を整えることで支え、主体的で個々人が尊重される生活を支援していきたい、ということです。実際に医療施設の子供用プレイルームや、高齢者施設の設計などに一緒に携わることもあります。そういった活動を通して研究成果を少しでも社会に還元していきたいと思っています。今後も地方自治体や国の研究機関などと連携して、研究や実践活動を進める予定です。私たちにできることは多いし、やらなければならないと強く感じています。

子供用プレイルーム実際に設計に携わった医療施設の子供用プレイルームによって、リハビリが進んでいなかった子供が遊びを通して生き生きと過ごせるようになった事例をうかがい、とても嬉しいです。

細胞の一生を科学してがん治療などの医療分野に貢献する

長原 礼宗理工学研究科 生命理工学専攻 教授
長原 礼宗

生物の最小単位である細胞の一生に着目し、一つの細胞が生まれてから死に至るまでの機能変化を研究しています。細胞には、寿命を迎えたり傷害を受けたりして機能しなくなった際、貪食細胞に食べられて自ら消滅していくアポトーシスという機能が備わっているのですが、何らかの要因でこの機能に異常が生じると、がんをはじめとした様々な疾患が引き起こされます。そのメカニズムを解明することで、抗がん剤開発などの医療分野に貢献していくことを目指しています。
一つの研究手法として、がん細胞に人為的にアポトーシスを起こさせ、その過程で細胞の中でどのような変化が発生するのかを分析しています。そこでは細胞内の微細なシグナルの伝達を解析することが重要で、アポトーシスが起きる前と後のごく微量なタンパク質やDNAの変化を測定するために、高性能な質量分析器などを使って実験を行っています。
私が大学院生に求めたいのは、自分の手で問題や課題を見つけること。学生たちにそれを考えてもらうためにも、答えをすぐに言わずに待つことも重要だと思っています。もう一つは、研究成果を積極的に発表することです。論文などの形でまとめることは、内容を総括すると同時に研究を次に進める上で大事なステップですので、国内外の学会はもちろん、学内の他学科や他大学とも連携して成果をなるべく多く発表できるようなサポートも行っています。

細胞生化学研究室膨大に存在する化合物の中から、どれが抗がん剤の候補になりうるか、発掘するにはコツがいります。そのためには、「何」を測定対象にするのかという発想と、それをいかに効率良く測定できるかが、重要です。

安全かつ便利なコミュニケーション環境の創造を目指して

八槇 博史情報環境学研究科 情報環境学専攻 教授
八槇 博史

インターネットの普及により、私たちは世界中と速く広くつながることができるようになりましたが、その一方でネット犯罪などの社会問題も大きくなっています。2013年4月に本学に開設された新しい研究室が利用者や社会の安全に役立つ情報技術の研究にどのように取り組んでいるのか、ご紹介しましょう。

情報安全技術研究室

安全な公衆無線LANを実現するトラストという概念

現在この研究室で進行しているプロジェクトの一つは、安全な公衆無線LANシステムの研究です。いま国内で展開されている公衆無線LANは、携帯キャリアなどが提供しているものと、街中や空港・駅といったスポットで使える、店舗や自治体などが提供しているものがありますが、我々が対象にしているのは後者です。これは、その場所にいれば誰もがフリーで利用できる通信環境なのですが、かなり危険が潜んでいます。基本的には、その場でメールアドレスなどを入力し、ユーザー登録をして利用するシステムになっていますが、その相手が本物のサービス提供者であるという確証はないのです。ですから、街中に誰がいるのかわからない状況で、相手が信頼できることを確認してから利用するための枠組が必要になります。これは分散コンピューティングやセキュリティの分野で「トラスト(信頼)」と呼ばれている概念で、それを公衆無線LANに取り込んで安全に使えるシステムの研究を行っています。

基礎的な技術が回帰しながら高度に進化する分野

もう一つのテーマが、クラウドコンピューティングの学術利用です。現在クラウドはかなり普及が進んでいますが、そのほとんどは企業活動のためのもので、大学の学術分野における利用はあまり広がっていません。大学の研究においては、学内でシステムを構築するケースがほとんどですが、クラウド上に並列かつ多数展開されているコンピュータをネットワーク経由して利用できれば、コストを抑えながら大量の計算を短時間で処理できるのではないでしょうか。このような利用を進めることにより、学術研究がより活発に展開されることに貢献したいと考えています。
情報技術の分野は、最先端といわれているものが、実は以前に流行していた基礎的な技術をベースとしていることが多々あります。10年や20年というサイクルで進化しながら回帰してきて、少しずつ高度化を遂げているのです。そういう分野なので、目先の新しさに振り回されることなく、根幹となっている理論や技術を的確に見据えることができる人材を育成していきたいですね。

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