令和7年度 PBL教育支援プログラム 成果報告「環境と化学」

2026.04.01

開講学部 工学部/応用化学科
科目名 環境と化学
担当教員 【工学部/自然科学基礎系】
田中 里美
【工学部/応用化学科】
木戸 晶子
【工学研究科】
坂田  昂平

Q1 PBLを導入した意図・目的

本科目では、身近な環境問題を科学的に考え、環境にやさしく持続可能な社会の実現にむけた「ものづくり」の取り組みを概観することを目標にしている。また工学基礎教育から専門教育への橋渡しの役割を担っている。今までPBL支援プログラムとして実施することで、学生のアクティブラーニングを促し、①自学の姿勢、②コミュニケーションスキルの向上、③プレゼンテーション能力の向上、などの成果が得られている。講義の最終回には、企業等から講師をよび、実践的な課題についてグループディスカッションすることで、学生がそれまでに教科書等から得た基礎知識を元にした、社会における課題解決を図ってきた。学生アンケートの結果では、多くの学生が、講義を通して科目への興味・関心が高まったと回答している。
 2025年度では、参考図書の電子書籍版を「購入」ではなく、サブスクリプションによる「期間利用」するモデルを導入することで、正しい情報を多く提供できる環境を整える。書籍は、ネットでは省略されてしまうような詳細な情報まで網羅しているので、情報の質・量共に高い媒体と言える。情報の量を集めることは誰にでもできるが、今必要とされているのは、質の高い情報だけを抜き取る能力であり、信頼性の高い情報を用いてプレゼンテーションができることを目的とする。

Q2 授業におけるPBLの実践方法

 授業内で3パターンのグループワークを実施
1.事前課題とグループワーク
【グループ分けの方法】
第2、3、7~12回で、1グループ2~3名、同じ人とは被らない様に毎回ランダムにグループを編成した。
【授業環境】
授業内容に関する基礎知識を事前に習得し、理解を深めることを期待し、事前課題3~5題程度課した。

例)課題と回答例

【問題の提示方法】
授業内で関連した内容の前後で、事前課題で調べてきた内容をグループ内で発表し、情報共有や議論を行った。
【成果発表方法】
共有した内容や議論の成果を、2~4グループの代表者に教室全体に向けて発表した。グループは34面WEBサイコロを用いてランダムに決めた。

図1 グループワークの様子

図2 発表

 2.グループワークとプレゼンテーション
【グループ分けの方法】
1グループ3~4名、ランダムにグループを編成した。
【授業環境】
第1回で、グループ内での自己紹介、発表テーマの確認を実施した。第4~6回では、事前課題をもとにグループワークを実施した。
【問題の提示方法】
グループワークで、発表内容のキーワードの選出、ストーリーボード作成、スライドの作成、発表練習を行い、PowerPointの作成などはSAが担当グループを巡回し指導した。2025年度、参考図書の電子書籍版「やさしい環境科学」サブスクリプションによる「期間利用」するモデルを導入した。毎回の作業結果は、個人およびグループ単位で提出し、翌週に講評を行った。
【成果発表方法】
第7~12回で、グループのプレゼンテーションを実施した。1グループ15分の発表時間とし、発表後は教員による講評、視聴している学生は発表をただ聞くのではなく、発表内容について点数評価を行った。点数に関しては、発表の評価基準の目安を提示した。プレゼンテーションは、教員ならびに学生の評価を総合して、ベスト・プレゼンテーション賞を4グループ選出し、第13回で表彰した。

図3 グループワークの様子

図4 発表の様子

 3.「社会における環境科学」グループディスカッション
【グループ分けの方法】
事前にテーマを配布、希望テーマ提出後、テーマ配属を決定し、1グループ9~10名に編成した。
【授業環境】
第14回における議論の質を担保するため、第13回を準備フェーズとして位置づけた。具体的には、自己紹介を通じたチームビルディングと、役割分担の明確化を図った。さらに、SAによる事前課題のチェックを行い、全員が共通の土俵で議論に臨める体制を構築した。
【問題の提示方法】
テーマ内容は、外部講師に提案して頂いた内容を採用し、ディスカッションは70分間とした。
<テーマ> 
・未来の食と環境を守る、アミノ酸発酵工場の運営プランを考えよう:味の素株式会社
・身のまわりの「グリーン調達」について考えてみよう:産業技術総合研究所
・サーキュラーエコノミーのためにできることを考えよう:埼玉県環境部
・「水をつくる」ということについて考えてみよう:メタウォーター株式会社
・節水と快適性の両立を考えてみよう!:TOTO株式会社
・未来の環境問題に必要となる「化学」を考えてみよう!:三井金属鉱業株式会社
・SDGsの観点から、新しい発電方法を考え、環境に優しい町を設計してみよう!:東芝エネルギーシステムズ株式会社
・種々の媒体を置き換えるための新たなICTを構築しよう!:TDK株式会社
・製造業のカーボンニュートラルの取組:大日本印刷株式会社
・SDGsに寄与する製品開発について考えてみよう:株式会社キッツ
・持続可能な容器包装の循環を実現しよう!:キリンホールディングス株式会社

【成果発表方法】
1グループ3分、まとめた簡易用紙を用いて発表を行い、外部講師からグループディスカッションの講評を頂いた。

図5 グループディスカッションの様子

図6 発表の様子

Q3 授業における成績評価方法

 ■ グループ評価(発表・スライド資料)
以下の観点に基づき、グループごとの成果を評価した。
内容の深化: 課題に対する調査の徹底と、内容の深い理解。
資料の質: 構成の工夫および、視覚的に分かりやすいスライド作成。
プレゼンテーション: 聴衆への伝わりやすさと、説得力のある発表。
■ 個人評価(レポート等:①科学関連図書、②国立科学博物館、③小論文、④事前課題)
個人の取り組みについては、以下の基準に沿って評価を実施した。
情報収集と参照: 適切な資料の選定、および情報源(出典)の正確な明記。
記述の適切性: 規定の分量、論理的な構成、および誤字脱字のない正確な文章。
評価方法: 事前に提示したルーブリックに基づき、採点。

Q4 学習成果の可視化への取組み

科目設定で掲げている分野の学習前と学習後の知識チェックを行い、学習後の理解度を可視化している。

図7 知識チェックの結果

どの分野も理解度が向上しており、学生自身が学習効果を実感している。環境問題に関する基礎知識、環境問題に関する科学的な見方、環境や資源の問題に関してわかりやすく説明する、人の話を聞き、自分の意見を述べる、環境や資源の問題に興味や関心をもつ に関するアンケート結果からも多くの学生が、講義を通して科目への興味・関心が高まったと回答している。

図8 学習効果のアンケート結果

Q5 PBLを発展させるための課題

昨年度は信頼性の高い情報へのアクセス環境を整えることに注力したが、今後はその環境を最大限に活用した『自律的学習』の定着が課題である。
具体的には、学生個々の学習効果の偏りを是正するために、リフレクションの意義を再定義し、内省を通じた質の高い学びを実現する必要がある。また、単に資料を提供するだけでなく、書籍を参照せざるを得ないような『発展的な問い』を課題に組み込むことで、学生の探究心を刺激する。運用面においては、共有ディスプレイを活用した情報の共同閲覧環境の整備や、実態に即した柔軟なライセンス契約への見直しを行い、情報の収集から活用、共有までをシームレスに行えるPBLモデルの構築を目指す。

Q6 授業の概要と進め方

1回:ガイダンス、班分け、自己紹介、課題の計画表作成
2回:グリーンケミストリーとは、高分子の化学【田中】
3回:役に立つ物質をつくる【木戸】
4回~6回:発表の準備、スライド作成、発表練習(グループワーク)
7回:大気環境(大気の成分、大気汚染物質、酸性雨、汚染物質の対策、排出粒子の対策)【学生】
8回:水環境(資源としての水、上水道、水質汚濁、水質環境基準)【学生】
9回:地球温暖化(温室効果と温室効果ガス、温暖化への対策)【学生】
10回:オゾン層(オゾン層破壊の化学反応)【学生】
11回:エネルギー(エネルギー変換)【学生】
12回:廃棄物のリサイクル(循環型社会とリサイクル関連法)【学生】
13回:グループディスカッション準備(課題の実施状況確認、自己紹介、グループ内の役割分担を決める)
14回:社会における環境科学(ゲストスピーカーの講演とグループディスカッション)


〇PBLを主体とした教育への取組みに対する支援(PBL教育支援プログラム学内公募)

東京電機大学教育開発推進室では、平成23年度から「学生が主体となって学ぶ」形式を取り入れた、いわゆる「PBL(Problem-Based Learning又はProject-Based Learning)」による教育の開発・運営を「PBL教育支援プログラム」として支援し推進しています。
PBL教育支援プログラムは、これからPBLを取り入れていこうと考えている教員やすでに実践しているPBLをさらに工夫しようと考えている科目を対象に支援を行い、その実践と成果を学内の関係者と共有し、学生の学びを主体とした教育の推進を図ることを目的としています。