令和7年度 PBL教育支援プログラム 成果報告「マイクロ流体デバイス特論」

2026.04.01

開講学部 工学研究科/電子システム工学専攻
科目名 マイクロ流体デバイス特論
担当教員 【工学部/電子システム工学科】
茂木  克雄

Q1 PBLを導入した意図・目的

マイクロ流体デバイスは、流体工学、材料科学、生物学、化学、そして微細加工技術が複雑に絡み合う学際的な分野で、座学講義だけでは十分に理解することが困難である。そこで、本講義では、座学だけでなく、実際にマイクロ流体デバイスを製作する実技実習を後半に取り入れることで実務に役立つ知識や技術を修得してもらおうとした。PBL教育支援プログラムでは、この実技実習で取り組むテーマ自体を学生自身に考えてもらい、その課題解決が可能なデバイスを一から製作し、さらに検証するまでの一連のプロセスを実施してもらう。このプロセスを通して、学生自身が課題を明確化し、解決方法をデバイスの仕様に落とし込む技術者としての思考を身に着けてもらう。通常の実験実習と異なり、ゴールや正解がない課題に取り組み、試作と評価のサイクルを回すことで、「理論通りにいかない現実」を解決する能力についても培う。

Q2 授業におけるPBLの実践方法

第5回以降から実践的なグループワークを実施した。まず学生には、教員が用意したテーマと学生から提案されたテーマの中から興味を持ったテーマごとに4~5名に分かれてもらった。各テーマの概要についてだけ丁寧に解説し、テーマに内包される技術課題については話し合いと実技から発見してもらうようにした。なお、話し合いの呼び水となる項目については指示した。例えば、「リーダの決定」、「実施工程の洗い出し」、「分担」等といったことは具体例を示した上で、必ずグループで話し合ってもらうようにした(図1)。
学生が円滑に話し合いを進められるようにする工夫として、BoxとOneDriveを活用した。Boxについては、製図データや、写真、画像、実験データといった各グループの成果物を保管するための共有フォルダを用意した(図2)。このフォルダに、教員からは計測装置のソフトウェアや、使用ライセンス、解説書をアップロードして、円滑に実習が進められるようにした。

図1 グループでの話し合い風景

図2 Boxに実際に上げられた画像や計測データの一例

また、OneDriveに複数人がリアルタイム編集できるエクセルシートを用意し、各回の話し合いの内容や決定事項の記録をつけてもらった。グループによっては、当初の想定通りデバイス製作がうまくいかず、失敗した結果を基に目標設定の変更や製作手段を再検討するところもあった。失敗からリカバリーしようと奮闘する状況は、学生にとっては不安でストレスを感じる状況であっただろうが、教員としては、良い実践教育になったと考えている。実習風景の一部を図3に示す。

図3 実験風景

Q3 授業における成績評価方法

成績評価は提出されたレポートで行った。レポート内容は、講義後半で実施したグループワークについて、第三者に伝わるようにまとめてもらう形式をとった。各自が実施した内容について、目的、課題、解決策、評価の項目を明瞭端的に伝えられているかを評価基準とした。また、教員が用意した報告書形式の書式で提出してもらうことで、実施内容を決められた書式で如何にわかりやすく正確に伝えるかを考えてもらった。このような体裁を採った理由として、社会人になった際に上司や社外の人間に伝わる資料作成の技能を身に着けてもらう意図がある。

Q4 学習成果の可視化への取組み

本講義では、グループごとにマイクロ流体デバイスを製作してもらっており、その成果物と実験データが可視的かつ直接的な学習成果となっている。
デバイス製作に時間を割き、各自が独自のデバイスを完成させるグループがあったり、協力して1つのデバイスを製作したグループもあった。1つのデバイスを製作したグループは、製作時間を短縮した分、デバイスの評価検証に時間を割いて実験データを蓄積していた。

Q5 PBLを発展させるための課題

 本講義では、取り組んだ実習を各自でレポートにまとめてもらった。このレポート作成を、実習グループで話し合う時間にしてもらおうとして第14回講義に充てたが、レポートのフィードバックがその場で十分にできなかった。そのため、次年度からは、第14回講義を実習成果の発表会にして助言や講評を行っていきたい。
今回の実技実習は4~5名のグループワークとして進めたが、受け入れ人数によって構成を大幅に変更する必要がある。そのため、PBL支援の対象として確定した段階で、設備の規模と調達可能な資材の数量を踏まえて、早期に受講者の人数を確定するような仕組みが必要であると感じた。
本実習は学部生の実験実習と異なり正解が用意されていないため、学生自身が課題の本質を見極めて解決していかなければならないが、能動的な考え方のできる学生(主に大学院生)と支持を待つ受動的な学生(主に学部生)との差が顕著にみられた。そのため、来年度以降は先取り履修科目としないことで対応できるのではないかと考えている。
 

Q6 授業の概要と進め方

授業構成を前半の座学と後半の実習に分けた。前半では代表的な応用例を紹介しつつ、後半の実習に向けた理論や、考え方、デバイス製作手段を身に着けてもらう内容となっている。後半は4~5名のグループに分かれてテーマを決めて課題解決に取り組んでもらう。以下は、各回の概要である。
第1回:ガイダンス
第2回~第5回前半:マイクロ流体デバイスの概論と、製作技術、応用例について座学を行う。
第5回後半:グループとテーマを決定し、役割分担や実施計画について話し合う。
第6回:AutoCAD、Inventorをインストールし、デバイスのデザインを決定して製図していく。
第7回:CAD製図の続きを行い、完成したデザインを加工できる形式に変換し、装置を読み込ませる。
第8回:デバイスの製作に着手する。まずは、ブランクマスクに描画とエッチングを施し、Crマスクを製作する。続いて、ソフトリソグラフィーの装置や3Dプリンタを利用して流路を製作する。
第9回:デバイス製作の続き。デバイスの完成を目指す。
第10回:継手部など送液を想定した確認を各グループで行ってもらう。
第11回:培養実験、粒子送液、電気印加実験
第12回:送液実験の続き。レポート書式の配布と解説を行い、実験データのまとめに入ってもらう。
第13回:外部講師のJAXA職員から現場での実用例について講演いただく。
第14回:実習内容をまとめて報告書形式のレポートを完成させる。その際、実験室で教員が質疑対応、評価を行う。


〇PBLを主体とした教育への取組みに対する支援(PBL教育支援プログラム学内公募)

東京電機大学教育開発推進室では、平成23年度から「学生が主体となって学ぶ」形式を取り入れた、いわゆる「PBL(Problem-Based Learning又はProject-Based Learning)」による教育の開発・運営を「PBL教育支援プログラム」として支援し推進しています。
PBL教育支援プログラムは、これからPBLを取り入れていこうと考えている教員やすでに実践しているPBLをさらに工夫しようと考えている科目を対象に支援を行い、その実践と成果を学内の関係者と共有し、学生の学びを主体とした教育の推進を図ることを目的としています。