2022年10月 今月の顔 阿部善也 助教

2022年10月号から今月の顔、工学研究科 阿部善也 助教をご紹介します

X線により物質の“起源”を読み解く

~X線分析技術を学際研究へ応用~

工学研究科 物質工学専攻
阿部 善也 助教

2012年東京理科大学大学院 総合化学研究科総合化学専攻 博士後期課程修了。博士(理学)。同年、東京理科大学 理学部第一部応用化学科 嘱託助教。国際協力機構(JICA)無機物分析専門家、東京国立博物館 客員研究員、金沢大学 客員研究員を兼任し、 2020年より本学工学研究科 助教。現在、金沢大学 客員研究員(考古科学)を兼務。

考古遺跡から出土した太古の遺物や、美術館に展示された名画の数々。そうした文化財の調査・研究において、最近では科学的な分析技術が活発に利用されていることをご存知でしょうか。材質の特定はもちろんのこと、産地の推定や、経年的な劣化の検証など、その目的は多岐にわたります。ただし、貴重な文化財の分析には制約も多く、特に「非破壊」で実施可能であることが強く求められます。

非破壊で実施可能な分析には色々なものがありますが、その一つがX線を利用した分析です。私は国内の装置メーカーと共同で、持ち運び可能な小型のX線分析装置を開発し、国内外の考古遺跡や博物館に持ち込み、様々な文化財を現地で分析してきました。例えば、エジプトの遺跡に描かれた壁画の顔料を特定したり、世界的名画に使われた技法を解き明かしたり、古代日本に伝来した国宝のガラス製品の来歴を追跡したり…。私自身の専門は化学(分析化学)ですが、それぞれの現場で考古学や美術史の専門家と協力しながら、学際的な共同研究を数多く展開しています。

エジプトの考古遺跡での壁画のX線分析

非破壊で利用可能なX線分析は、文化財に限らず色々な研究に応用できます。最近では、探査機「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」から回収した希少なサンプルのX線分析を担当し、世界的な論文誌である「Science」にその成果が掲載されました。文化財と小惑星。一見すると無関係な研究分野に思えるかもしれませんが、どちらもX線という光を使うことで、物質の中に秘められた起源情報を解読している点は共通しています。

東京電機大学中学校でのコラボ授業

このような「文理融合」「分野横断」という考え方は、今後ますます重要度を増していくでしょう。幸いにも昨年9月、東京電機大学中学校とのコラボ授業が実現し、2年生の社会科の授業の中で文化財の科学的な分析に関するお話をさせていただく機会に恵まれ、文系・理系の垣根を超えた世界を伝えることができました。本学の学生の皆さんにも、分野の枠組みに囚われない自由な発想を持って、新しいことに挑戦し続けてほしいと思います。

コラボ授業の様子は「TDU Agora」2021年12月号に掲載されています。
「TDU Agora」2021年12月号はこちらから

学園広報誌「TDU Agora」Vol.57(2022年10月号) 今月の顔より転載

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